マッハIIIパーツ虎の穴 最終ラウンド
エピローグ
それでは これからどうしたらいいのか…

 

このサイトを前任から引き継いで数ヶ月が経過した。
マッハ系のパーツの入手に関して インターネットで 店や個人、会社を批判することは御法度とされているし ましては
お金が絡むことなのでこれまでは遠慮してきた。
しかしパーツの流通や それを巡る現状にはどうしていくのが良いのか…これはより良いマッハライフを送るために必要
不可欠なことなので 自分の責任下に書きたいように書かせていただいた。
かなりハードな内容であったが 手応えのあるコラムになったと自負している。
最後に 他の車種や メーカーのファンはどうやってパーツのやりくりをしているのかからヒントを貰い 今後に活かすことで
締めくくりたい。


先日 クレーンのハイテンションコードを手に入れる時に HDのショベルヘッドのオーナーと話しをする機会があった。
ショベルのパーツは今でも供給されているのかと訊ねると 楽しく走るためには全く支障が無いとのことだった。
元々が改造部品が豊富なハーレーなので 全くの純正パーツでなくても それはそれで許される風潮にある。
しかしマッハと同様に 頑ななストック信奉派も存在し 彼らが満足できるオリジナルルックの社外品も多数出回っている
らしい。 HDの純正NOSパーツも手に入るが HDが認めた半純正とも言える社外パーツもある。
そんなメーカーやショップからエンジンパーツや電装品が供給されている。
ただしHDのロイヤリティーは結構高いらしいので 個人レベルで公認リプロパーツを出すのは難しいらしい。


ホンダの子会社がCB72のマフラーを再版したのは記憶に新しい。
値段が高いとか 細部が当時と多少違うなどと噂を少しだけ聞いたことがあった
が なんといってもその心意気に感激してしまった。
ヤマハは子会社のワイズギアーが エンブレムやフロントホークやSM PLなど
を再版しているし カワサキもそろそろなんかやって欲しいところだ。
しかしカワサキは 例えばW1用やZ2用と銘打って部品を作ったりすることに
対して大変寛容な会社である。 その点は評価したい。
つまり リプロをやってくれと言わんばかりの環境なのだ。



トライアンフやBSAのエンジンパーツ等が未だに供給され 殆どレストアに困らないのは これらのメーカーが倒産する際
に 株主が集まってパーツ製作のための金型や図面 販売権等を買い取り その後もパーツを供給していたりするから
らしい。 その株主というのは 元々は普通のファンであったりする訳で 一ファンのメーカーへの介入度の強さが
計り知れる。 トライアンフやMVの再生 またHDのAMFからの独立も ファンが株を買って投資したことが関係している
とも言われている。
会社を乗っ取るほど株を持つことは不可能だが お小遣い程度でも株を買って 会社を応援するのが大人のファンの
あり方かもしれない。


オンタリオのカタログ。
フィアット500ユーザーなら このカタログに誰もがお世話になっている。
フィアット500のファンが リプロパーツを熱心に出しているという話しは聞いた
ことがない。 何故なら 殆どがメーカーの純正部品として手に入るからである。
そのパーツを日本の専門ショップが在庫してくれて販売しているのである。
オーナーはそのお店のパーツカタログを見て ファックスで注文するだけだ。
外車の部品なので お値段高目の印象はぬぐえないが 日本の旧車を維持して
いくことを考えたら 手間としても金銭的にも楽だと感じる。


FIAT500の部品は 今でも新車を組めるぐらい出ると前に書いた。
これは FIAT社が 中小工場のギルドであり クルマを作るための工場の集まりをFIAT社と呼んでいる、そして そこでは
注文があれば下請け孫請けや ひ孫請けがいまだに500の部品を作っているということによると考えた方が良い
のだろう。 言うなれば メーカーのタグの付いた小工場製の部品だ。
しかし500はL型とF型だけで2272092台も作られたクルマであるので 小工場が細々とパーツを作っても採算ベースに乗せることも可能なのだろう。


それでは 日本の我々の単車やクルマの部品は 誰に期待したらいいのだろう。


メーカーからの供給が悪いことがすべての元凶であると以前に書いた。
それは事実だと思うし この考えは今でも変わらない。
しかし 実際メーカーが供給をストップし 再生産されずに在庫のみを買うしかなくなってきた現在 その状況を嘆き
愚痴をタレるしか無いのだろうか?


そこでアタマに浮かべるのは やはりW1クレージーズのことである。
Wシリーズは 元々根強いファンが多く メーカーからの消耗品の供給はマッハシリーズよりも少しマシである印象だ。
しかしそれだけではなく W1を維持していくことが容易となる活動をしているのがW1クレージーズである。


W1クレージーズのリプロパーツのカタログは パーツ番号とパーツ名がひたすらびっしり並んでいるだけだ。
どっかにあったはずやな〜と探す間に他の発見をすることも多いほどだ。
どこに何が書かれていて どのような部品かを全て把握しているのは
クレージーズの泰山さんとその他数名のスタッフだけかもしれない。
コピー刷りのカタログには 「パーツ代に消費税は不要です」と書かれている。



W1クレージーズは 一個人のW1のオーナークラブであるが ミーティングやツーリングの活動のみならず パーツの
リプロダクションにも力を入れている。
部品の仕上げや材質の良さは ストックよりもずっと良く そのラインナップは隅々のパーツに及ぶ。
ゴムパーツは わざわざ金型をおこして大量生産しているのだろう。
すべてがリプロパーツという訳ではないが 流用できそうな部品を用意してくれているのも嬉しいところだ。


ところがクレージーズの素晴らしいところは これらの部品代は 個人やショップの利益にしないで 採算が取れた段階で
次のリプロや流用パーツのストック代に回されているところであろう。
そしてマッハ系のクラブが 特に見習うべきは シングルキャブのW1やW1Sにとどまらず SAやW3の部品にも
愛情が注がれていることである。 (我々で言うところでは KH500やH2Cの専用部品を出しているようなものだ!)


クラブをまとめる泰山さんは リプロパーツは会の趣旨を理解して金型を作ってくれたり 部品を製作してくれたり
流用できそうな部品の情報を提供してくれる会員がいて実現できており さらにはそれをモンクを言わず 買って
使ってくれるファンがいるので成り立っていると おおらかにお話をしてくれた。


しかし大変残念なことには マッハ系のマニアは 部品に対する講釈と薀蓄が豊富なのはよいが
オリジナルパーツとの相違を指摘した上で 結局は20年前のパーツの値段に比べて高いとかなんとかで
協力してもらえないことが多いと言われる。 ああ さもありなんなぁとため息が出てしまった…。
日本のマッハファンには 純正NOSパーツ至上主義が浸透していて リプロパーツや代替パーツのプロデュースが難しい
のかもしれない。 彼らには良い材質や 仕上げの良さよりもメーカー純正であることの方が大事なのだろう。
これは マッハも新品の頃はもっとよく走ったのではないかという妄想や 雑誌が煽りたてて形作られていった「伝説」に
一部起因するような気がしてならない。


パーツ虎の穴の最後を締めくくるところで 一つ提案するところのことは
我々が期待するべきはメーカーやショップ クラブではなく 自分らファン一人一人の意識と 行動力であると思われるが いかがなものだろうか。


パーツが手に入らなくて困るとぼやく前に 我々マッハファンは パーツを担う側にまわること またはそれに加担する
気持ちを持つべきだろう。 たとえ今は金型を作るほどのお金と行動力が無くても 誰かが作った良質のリプロパーツの
元を取ることには協力できるかもしれない。


自分自身は部品の図面を引くことが出来ないが 安く親切にやってくれる工場を知っているかもしれない。


マフラーを100本作ってもらって これを立て替えて販売することはできなくとも 今ファンの間ではどんな部品が
求められ 必要とされているのか調べることや そのアンケートに答えることぐらいはできるかもしれない。


自分がストックしているパーツを売りに出すことはしなくても 複製部品を作る時にサンプルとして貸し出すことは
できるかもしれないし 流用可能な部品番号を知っているかもしれない。


一人一人の情報や 協力があれば W1クレージーズに負けないぐらいの素晴らしいマッハクラブが生まれると
信じて止まない。


手始めに 近日拙サイトの隅にでもリプロパーツのコーナーを設けてみたいと思う。
個人製作や ショップ製作に問わず良いものを掲載していきたいと思う。
掲載希望の方があれば ご遠慮なく連絡を下されば…と思う。



マッハIIIパーツ虎の穴 (平成12年4月27日)



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肝に命じてジローのアジトに帰る