ジローの発見?理想のマシン!・フィナ〜レ

 

 
〜さらば愛しのジロー〜

 

 

ジローは疲れ果てていた。 その日一日の価値を 三曲千円流しのアガリで判断するのは30代前半で止めていたが 今となっては銭を勘定することこそが自分の存在価値とでも感じられるようになっていた。 客足の引いた初秋の居酒屋で つい深い溜め息を洩らした。

 

ある朝目覚めると ジローマシンは完全にその機能を停止していた。
 
まるでドラえもんの最終回のように 突然の機能停止だった。 贋ジローとの対決の後 フランスから
の帰途も難無くこなしたジローマシンだったが 光明寺博士氏の予言通り あの日から365日で完全停止するとは 無念を通り越して呆れすら感じられた。
 
これで旅が終わるのかと思うと あっけないものだ。
「このクソCDIに時限装置でも仕掛けてやがるんとちゃうか〜」とCDIを分解しようとすると やはり例のミュージックが流れた。
締め上げられた頭で判断したところ CDIは問題ないらしい…

 

今や客足の途絶えた居酒屋の片隅で ジローは千円札をポケットにしまい 代わりにギターをとってつま弾いてみた。
まずはウディーガスリーを弾いてみたが その不安ながら自由そのもののメロディーは彼のブルーな心境には全くマッチしていなかった。
代わりに出てきたのは 誰もが知っているあの一曲だ。

♪…青い地球の水平線に           
何かがきっと待っている〜 苦しい…


 

「表のバイク、オジサンの?!!」

咄嗟に威勢の良い女のこの声が センチメンタルな一曲を遮った。
見れば 背の低いあまり化粧っけのない女のこが立っている。 
こんな田舎の真夜中の居酒屋で出会うと まるで宇宙人に会ったような錯覚に陥ってしまうような とにかく場違いで唐突な感じのする女のこだ。

「私もね オジサンと同じバイク乗ってるの でもね 最近まったく動かなくなっちゃって困ってるのよう!  こんなところで詳しそうな人を見つけるなんて 私ついているわあ。  アレが動かないと私とっても困ることになるんで ちょうど良かった! すぐに動くようになるかなあ どこが壊れたんだろ!  イキナリ動かなくなるなんて酷いわよねえ。  作ったメーカーは何考えてるのよ。 だいたい部品なんてどこを探しても出てこないし サービス悪いったらないわ。  出たら出たでとんでもなく高い値段よ!  バイク屋さんも酷いのよ。これで直ったなんていうから お金払ってエンジンかけて出たのに ろくすっぽ走らないうちにまたエンコよ  ねえ 聞いてる? …どうしたのオジサン?」

「喋るスキがないんだ…」
 
藪から棒に畳みかけられて ジローはこう答えるのが精一杯だった。

その彼女が住み込みでアルバイトをしているというユースホステルは 細い路地をくねくねと上がって 町を見下ろす丘の上にあった。 その子の言うところの単車は 物置小屋の横で すでに何年もそこで朽ちていたのではないかというかの如く各座していた。
真紅のガソリンタンクは既に日に焼け 程よく退色している。 ぼろいマフラーは その単車にありがちな風情だ。 おおかた朽ち朽ちになりかかっているが しかし それは紛れもなくジローマシンと同型の一台だった。
 
絶滅寸前のニホンカワウソが別のニホンカワウソに出合うような そんな不思議な感覚だ。
 

「今夜はユースに泊まってってよ。 ペアレントに話しして安くしとくわ。 …嫌なの?」

「…まさか これからホステラーミーティングがあるんじゃ…」
 

 

翌朝 ジローはその朽ちつつあるマシンの点検をはじめた。



キャブだめ… エアーインレットパイプ破れ… デスビキャップだめ… ローターもっとだめ… ハイテンションコード当然駄目… バッテリー上がり… ヒューイ(左ピストン)リング焼付き… オイルポンプ漏れ漏れ…
 
しかし 決定的な問題は CDIのAユニットの内部断線だった。
Aユニットは 構造が簡素なのでパンクする事はないといわれているが どっこいハンダ不良が多く たちの悪いことに機能したりしなかったりすることがある。 何かの弾みで掛ったり掛らなかったりする症状が見られたら 疑わなければならなかった。 しかしBユニットと違い 音がする訳ではないので 故障を見分けるのは困難だっただろう。

「あいつがネジ一本まで自分で仕上げたなんていうから信用してたじゃないの ねえ! まったくヘッポコなんだから〜。」

「ところで お前 これ自分のんとちゃうやろ〜?」

「あ!しまった!」

 


 
 
 
〜伝説のマシン試乗記(by マッハ素人)〜
 
 

 

ついに千里山スピードウェイ(ジロー基地から単車で3分)にて定置試験が行われました。
何をかくそう、今まで乗ったトリプルはひとのKH250か400か忘れたけどそんなもんです。KAー1(500SS初期型)は初めて乗ります。


 
 まずは6万キロ走破の白影に試乗です! 

 

千里山スピードウェイにて全開走行する筆者(1970年にタイムスリップ中)


メットは Buco ですが、やっぱしこういう単車には似合うなぁ!


 

何かやたらエンジン幅だけ広くて末広がりな変なポジションの単車です。
自慢のエグリもニーグリップでけへんしステップ位置も取って付けで違和感あり!しかし変ポジでは有名なスポーツスター歴1000kmを誇る筆者には通用しないぞ。

雑誌の言うとおり低速スカスカって感じで、昔のチャンバー改悪ミニトレを思い出しました。3気筒あるから低速スムーズやろう、と思ったらダメです。ストーン!と回転落ちますんでやはりギャンギャンいわしながら発進することになります。でも一速が高いんかなぁ?よくわからんかったなぁ。
 
そして、礼儀としてガンガン回します。
「低速では付きの悪かったエンジンは中速なんたら回転付近よりトルクが乗って来てどうたら・・」のようなステレオ試乗はやめてさっさと全開にしてみました。
これが空冷2ストだっていう、パワーバンドに入ったら何だかわからん世界に突入です!!これはムチャ笑える〜!
野蛮さはふつうの2ストじゃなくてやっぱしレーサー(昔の)寄りかなぁ。私が乗った経験内では81年ヤマハIT175(←最近これに凝ってる)が近いです。そしてブレーキがプアなんが一番こわいのんと、車体も全然パワーに追いついてないです。光明寺博士曰くこれはよー効く方とのことですが・・。
この時代の車体はこんなもんやろうけどエンジンだけでかいのん載せたって感じでウイリーしたら吹っ飛びそう〜。

 

 
 
次に、よりパワー出ていると言われる赤影に乗りました。

 

← 懲りずに軽装で乗るやつ。

  


写真がブレてますが、まあ乗っててもちょうどこんな感じです。

 

こっちはレバーがオフ車みたいにちょっと下向きにセッティングされてるんで個人的には落ち着きます。しかし例のバー○ットのクラッチは重すぎ〜!エンジンは中速が太くて使いやすいな〜。
そしてパワーバンドに入れたつもりでタコメーターみたらたった4000rpm!え〜!?マッハ恐るべし・・と思ったらタコが不調やったらしいです。ってしてるうちに大分慣れてきて解ってきました。
昔の単車は昔のトレールのつもりで乗ったらええのですね。特にKAは前輪加重も軽くてそういう感じです。
大径ホイールはW1ほど立ちが強いわけでもなくそれなりに曲がりますよ。バンク中はサスがボヨンボヨンですがまあ普通に走ってる分には不具合はないです、←この辺もだいたい雑誌通り。
そして、伝説のウイリーどうたらってのは前輪が軽いんでオフ車のように浮き気味になるってことでした。3速で前輪が上がる事はないけど、もっとレーサーっぽく常に研ぎすましたKAなら上がる可能性も見える。
(もし浮いても後輪ブレーキの甘さからして踏んでも落ちない可能性大なので止めましょう)

 

 

まとめ


伝説のマシンに憧れている美奈さん、マッハとは巨大な原付でした。

教習所のよくできた4気筒で免許とったひとが某オソマツとかで大金はたいて買ったら「何じゃこれ〜」でしょう。
ジローさんの言う通り、これはこの時代の量産試作実験機だと思ってつき合うモノやと思いました。
まあ、雑誌であおってる程乗りにくくはないですがこんなプ〜な車体でCB750K0とせって万博周回路をぐるぐる回っていたと思うとステキです。しかしホンマに200km/h も出してたんかいな。
 
 

後記


各地でマッハのイニシエーションを受けて泥沼にひきこまれる被害者が続出している様ですが、オフ派の私は全然大丈夫でしたよん。こんなもん維持する根性ないですし。あー、でも空冷2ストはええなぁ。
IT175 探しに兵庫県の某旧車トレール屋いこかな・・。
↑関係のない方向で終了

 


 

この赤い一台は どうやら彼氏の父親のものだったらしい。 亡くなった父親の供養ツーリングをしていた彼氏と なにやら失踪中に出合って そのまま彼と東京に帰ってきたものの その彼氏が ある日突然なんの予告もなく 単車で家を出てしまったらしい。



よく分からないが その彼氏を追ってきたところ この町で立ち往生したしたそうだ。
さすらいの旅を続けるジローには なんとなくその衝動を 身の内側で理解することができる。

「異常な状況で結ばれた関係は長持ちしないというよ。」

「なによ!こんどはキアヌ=リーブスのつもり? あれれ?」

訳が分からないが そういったまま今度は泣き出した。
ジローにはその意味がさっぱり分からない。とにかく たいへん忙しい女のこだ。

彼氏は四国八十八ヶ所を今度は逆に回っているらしい。
「金色のね これより大きい奴。 それに乗ったらお父さんを超えた気になるみたいでね。 バッカみたい。 たか〜いお金出して ドミソから買ったら亡くなったお父さん怒るんじゃないのっ?て言ったら 逆ギレされちゃった。」

不動となった二台のマシンの良いとこ取りして 旅を続けようということになった。
基本的にはそのマシンからジローマシンに移植することにして 外装は赤を使うことにした。 こうすると赤のオーナーの目に付きやすいだろう。

「さて これでどうかな〜」とキック一発!
ギャオ〜ン ギャンギャンギャオ〜ン!!
轟々と響くエグゾーストノートと 白煙の中 強化合体ジローマシーンは甦ったのだ!!

ともあれ 奇妙な相乗り状態で旅が再開し始めた。 晴れやかな鰯曇の下、ニュージローマシンは 快調そのもので三桁国道をひた走る。 厄介なお荷物を後ろに乗っけながら…。

「んで これで彼を見つけて それからどうするん?」

「ちょちょっと とっちめてやろうと思うだけよ。」

「ひ〜こわいこわい。 でもきっと彼も ちょっと先に行ってどっかで待ってるだけかもね。」

♪苦しいこともある筈さ
悲しいこともある筈さ♪
 

♪だけど僕らはくじけない
泣くのは嫌だ わらっちゃお♪

 

…飛ばせジロー!

ジローの発見!この一台! 完