ジローの発見?理想のおっさんマシン!

  
 
〜新たなる旅だち ジローよ永遠(とわ)に〜

 

 

ジローは交野の田舎道をゲッター250トレールでのんびり流していた。

それにしても眠い・・。このけだるさは陽気とあたりに充満するのどかな野焼きの匂いのせいだけではない。もしかして・ト・シ・・・。
感傷的になっているジローの想いを図らずもかき消すように人工的な景観が突然現れた。いつの間にか護岸されてしまった天の川の真新しい新磐船トンネルだ。

「ああ、若い頃この先の磐船街道で納車したてのKMX200で当時最新のVF400Rを追っかけたなぁ・・。」「悔しかったんか知らんけど、乗ってたにーちゃんかなり怒ってたよなぁ。こんな狭いワインディングではレプリカよりトレールの方が楽で速いのんを知らんかったんやろなぁ。」

しかし相も変わらずハナシの導入は回想シーンである。こっから先は実際の体験ネタだがまた恥ずかしい芸風使い回しかいなぁ、などと自問自答していると後方からボボ〜ッという品のない音が近づいてきた。
「どうせ86改かなんかのお子ちゃまグルマやろう、張り合うトシでもないし先に行かそう・・。」
そしてその謎のモッサい音はトンネル内でジローに追いつき、あっと言う間に追い抜いていった。

が!しか〜し、その瞬間、ジローは目を疑った!なんとそれは頭文字Dではなく若者の乗る改造スクーターだったのだ!?
いくら自分が流しているとはいえ、かなりの速度差でセコ速トレールを追い抜き、トンネルを抜けた直後エスケープゾーンの無いあの荒れた右コーナーにべったり寝かして進入する姿を見て一瞬で腕の差と無謀さを認識したジローは昔のように追撃するわけでもなく冷静に彼を目で追った。

「う〜む!今はやりのビッグスクーターってやつか!H社かどっかの250やと思うけどそれなりのヤツが乗ると巧さ半分考え無さ半分であんなハイペースで攻めれるんやなぁ・・!」
「しかしスクーター君よ、この先2個目のトンネルを出た次は磐船街道最大の攻略ポイントとなる左ヘアピンやぞ。XR650R買っていつかはそこをドリフトで回り切って見せると豪語したけどイッコもできそうにない某氏のこだわるあのテクニカルなタイトコーナーをスクーターごときで、・・」と考えているうちにその激速野郎はすばらしいスピードでヘアピンをクリアし、視界から遠ざかっていった・・!。

「うひょ〜〜!スクーターなんて楽なだけのオッサンの乗りもんやと思っていたけど案外イケるんちゃうのん!?」
 



 

若気のイタリで信貴スカを攻め愛機を炎上させたのも遠い昔、今ではチタニウム製のサイコガンの痛みが梅雨入りを教えてくれる・・。
風邪の高熱にうなされた勢いで昔を忍ぶホームページを立ち上げたりもした。昔とった杵柄で20歳も年下のメンバーとライブしてもまだまだノープロブレムで行けると自認もした自分だが、悲しいかな三十路後半を過ぎてからはカラータイマーが点滅し始めたウルトラマンで流れるナレーションのように体力は急速に消耗しているのも事実だ。

ジローは興奮も醒めないまま、千里山ユニクロの向かいにある本屋でステレオタイプ記事だらけと化した今どきバイク雑誌を読みあさっていた。
「こんな何もひっかかりのないインプレなんか誰でも書けるぜ。どうせ内容は無いよ〜、だったら当時から広告誌として開き直っていた○ートバイ誌の方がよっぽど潔・・。」
ブツブツ言ってるうちにひとつの広告が目にとまった。

オートマティック・スーパースポーツ』・・・!
 

「おお、これがイタリアのナポリで発表されたという・・・。これなら、いかにもローリンして末世、というんでなく『スポーティでお洒落なミドル』を装ってさりげなく攻めれるかも・・・しかも楽に・・!!もしかしてこれが技術の進歩と調和ってヤツ!?」
相変わらずしょうもないことを口走りながらもこれで少数精鋭クランクケース開け閉めクラブとも決別することが出来る!と甘美の誘惑が心の隙間からしみ込んで来た!

嗚呼、前厄も近いと言うのにおなじみパターン通りにクラクラっと行ってしまって良いのか!危うしジロー(39)!

 


 

スポーツスクーター・ヤマハTMAX
 
水冷 DOHC バランサー付きツイン
 


  

ヨーロッパそして予想外に国内でもバカ受けしたというマジェスティ250(第2期トライアルブームの頃「ミックアンドリュース・マジェスティTY250」と言う同じ名前のトライアルマシンがあったのを覚えている貴方はけっこうエエ歳です←余談)をよりスポーツ走行に特化させたヤマハ渾身の一台。


 

チャリで言う「三角乗り」か?


モデル身長・自称155cm

ちなみにシート幅が広くてリッターバイクより足つき悪いです(体感上はXR並)

こんな小径ホイールの割にはけっこう良い操縦性を出しています。スクーターにしてはよく頑張りましたって感じ。
レプリカ黎明期のあの神経質な16インチとはちがって技術の進歩を感じます。

 

2ケツに最適な超ワイドリアシート。
この広さは快適だが、夏は接触面積が大きくて暑いし汗でひっつくという意見も。

やへーさんちのエテ吉に対抗してこっちは大魔王の壺だ!!

 

納車翌日に木津川のキャンプ場に行ってみました。

「未知のオートマスポーツ!」ってそんなに煽んでも普段の生活に密着したおしゃれなコミューターとして魅力的なマシンです♪
でもスペック重視の日本ではそう言わな売れへんのかなぁ。



 
同社のツーリングマシンTDM850と同じ車重、同じ重量配分やというのに重心の低さのせいか取り回しがかなり軽い!しかし、その予想外な軽さが皮肉にもスクーターっぽい安っぽさも醸し出すことになる。
とりあえずアクセルを開けて発進してみる。国内仕様のせいか、期待していたBMWのフラットツイン風の排気音はほとんど聞こえず、シュルシュルキュル・・とバダリーニ式変速機のプーリーベルト音のみが目立つ。

「ん〜、やっぱしこれはスクーターやぞ・・。」
「ナンボ美化しても『そのマシンはスーパーチャージャーをオンしたマッドマックスのインターセプターの如くギュウーン!とベルト音を伴って猛然と加速を始めた!!』なんては書けんよなぁ」

しかし何の緊張感もなくいつの間にか国道では赤キッププレゼント並のの速度に達している。60km/hを越える付近から小径ホイールの軽々しさは影を潜め、しっとりとした操縦性に変貌するのが解った。

「なるほど。時折ギャップを乗り越える際にのみホイールの小ささとサスストロークの短さでスクーターを意識するが、これは確かに近代的スポーツバイクなのかも。」
「これは良いかも!」

おっと、続編だけあっていままでとは違うオトシなのかと思ったのもつかの間、「これも欲しいが2ストもええ」「デロデロ直立ツインももちろん良いし、次はマイクヘイルウッドレプリカもまた良し!!」・・・・!。
 
 

 
最終回では解決案をうっかり忘れていた例の光明寺内燃機特製CDIの音はもはや聞こえてこない。ジローは悟った。自分が今!跨って走っているそのマシンこそがベストマシンなのだ。と。

そうだ!いつまでも楽しく乗ったもん勝ちだ!
将来、息子に「お父さんそれは耳鳴りじゃなくてBユニットのピー音ですよ。単車もそろそろいい加減にしたらいかがですか。」と標準語で諭されようが、自分の死後「うちのジイさんが乗ってたビンテージマシン、納屋から出てきたぜ!」「マジ?!見せて見せて」「な〜んだ。ハスラーだけど11型じゃん。」などと言われようが、腰が砕けるまで乗り続けてみよう!昔から「トリプルの魂100まで」とも言うじゃないか!

 

♪バカは死ななきゃ〜治らない〜〜♪