鳥を見た
 

 

 

さて、今回も絶版プラモが続くので申し開きとして最新再販プラモを紹介しておきます。

 

後期版のアルカディア号(舳先にラムがついたやつの方が松本零士の年代記では後期版になるとオタクな方に言われましたが)がバンダイから再販されました。 
同時にスタンダードサイズ版とエメラルダス号も出ています。

ひところネットオークションで高値で売買されていましたが再販されると定価(のだいたい二割引き)で買えるので出たときに買ってください。  

 
アルカディア号の特徴的な海賊船風装飾をモールドで再現してあります。 タカラ版のアルカディアではこの部分がうるさ〜くなってしまいちょうど霊柩車かお神輿モーツァルトのあたまみたいな違和感でした(かっこ悪いけど現在では恐ろしいプレミアがついています)。

この頃まではバンダイも景気が良くてこの大型サイズとお手ごろサイズの二種類出していましたが…

 

 

船体の後ろ側は結構きれいで芸コマなモールドが入っていますが艦首へいけばいくほどモールドが甘くもっちゃりしています。

発売に向けて金型にかけることができる時間とお金に限界がみえたためだと思われます。
まとまりの良いお手ごろサイズ版に比べてスケールを拡大して迫力を出そうとしたが ただ単なるサイズアップ版になってしまったというとほほプラモです。
一枚の金型の中でこれほどリキの入り方の浮き沈みが見えるプラモも珍しいですね。

バンダイは当時この後「千年女王」の戦艦(なんたらザウルス?)をだそうとモックアップまでは作りましたが 模型化には及びませんでした。
まさしく英断だったかもしれません…

しかしどうしてハーロック号なのでしょうか?商標の都合かなあ?


 


 
静かな住宅街の角を曲がると板塀のつづく路地に出た。

街頭の灯りがアスファルトに寒々と影を落としている。ニセジローは路地の突き当りに目を向け目標物にむけて足早に進んだ。 行き止まりの路地に大型の石でできた箱が置かれている。 ニセジローにはその箱が何であるかは知る由も無かった。 
ニセジローはひらりと身を翻して箱の上に飛び乗り板塀の向こうへ飛ぼうとした が…。

「ベコン!」 

石の箱の上面は半朽ちの鉄板でできており堪らず悲鳴をあげたのだ。 すかさず近所の犬が吠えたてる!!

「シー ざんすよ〜 イイ子ちゃんざんすね 静かにするざんすね〜」

ニセジローはすばやく塀の向こうへ飛び去った…



 

 
最近見かけないもののひとつに路地裏の石でできたゴミ箱があります。 今ではゴミの分別収集が進められていますがむかしは紙くずもさば缶も割れビンも み〜んな一緒くたにダイレクトにこの石製のゴミ箱に捨てておりました。 前面の木の板を外してゴミ収集のおじさんがスコップでゴミをかき出していました。

またこの石のゴミ箱は「んじゃ 6時半に集合」と銭湯に行く時の集合場所となったり蓋にロウセキで草野球のスコアーボートを書き込まれたり探偵ごっこの牢屋になったりしておりました。

もちろん塀を飛び越えて冒険に出る「飛び台」としても活躍していました。

写真は新旧ゴミ箱が並んだ珍しいシーン… 

 
石のゴミ箱を探してポッケで散策してみました。 
意外と生き残っておりましたが現役バリバリで活用されているものは少なくもはや使われなくなって所在なくたたずんでいるものや盆栽(なんかももうすぐ絶滅していく趣味なのかな)の台となって再就職しているものも見られました。

これは上の写真と一見して同じものに見えますが大きさがふたまわりぐらい違います。 
形はそっくりなので同じ石屋さんに注文して作られたものかもしれません。

さりげなく石屋と書きましたがむかしの石屋さんは墓石ばかりではなくゴミ箱も作っていたのでしょうか? 

 
ちょっとデザインのちがうものもありました。 
横に名前を書くように平面を出してあって今でも名前を読むことができました。

かつてはゴミ箱も「どこどこさんちのゴミ箱」と呼ばれていたのかもしれません。

蓋がベコベコに朽ちていくのは普通に見られるのでしょうが前面の板は 酔っ払いに蹴飛ばされて壊れたりしてお父さんが日曜大工で修繕したりしていたのかもしれません。 

 
最後は一番年月が過ぎたと思われるものを挙げておきましょう。

蓋の朽ち加減もグーで崩れないようにか前面に大きな石がかましてあります。 箱自体の角も風化して丸くなっています。

横の枯草とあいまって水木しげるみたいですね。

模型のコラムでゴミ箱を出してどないすんね〜んという声が聞こえてきそうなんで この辺にしておきます。
いや別に深い意味は無かったんですよ… 


 


 
着地した際に鼻の奥に独特の痛みを感じたが捜し求めた獲物を見つけてニセジローは興奮しはじめた。 何の事はない工事現場のバラック小屋である。 しかしすりガラスの向こうにはぎっしりとダンボール箱が見える。

「とうとう見つけたざんす〜! ここがジロー模型の隠し倉庫ざんすね!」
ジロー模型店は5坪ほどしかないちっぽけな店である。 しかし次から次へとストックが出てくるのが不思議であった。 どこかに隠し倉庫があるに違いないそしてそこにはマニア垂涎のお宝が眠っているに違いないとニセジローは狙っていたのだ!

ふとバラック小屋にセキュリティー会社のステッカーが張ってあるのが目に付いた。さすがだ。さすがにお宝の眠る宝物殿だ!
ニセジローは失望しつつサッシに手をかけた。 がらがらがら〜っとあっけなくまったく拍子抜けにサッシが開いた。
「ありゃ?あっさり開くざんすね?」
よくみればステッカーはホームセンターで売ってる偽もんだった。 鍵もかけ忘れているのか…

さてバラックの中には埃にまみれた大小形もさまざまなプラモの箱が山と詰まれていた! これがジロー模型の不良在庫…いや宝物殿か!!

「フジミの宮島厳島神社… う〜ん こんなもん値段がつかないざんす! アオシマのアポロ…う〜ん 少し前まで欲しかったけど最近再販したざんす! 今更いらないざんす〜! キー!!なんか儲かるもんはないざんすか! キングシャークとか C級ジュニア707とか… あ! あったざんす!!」

高潮した顔で古びた模型を引っ張り出した! 興奮で手が震えている!

「こっこれは クーブリックおたくのジローさんのお宝ざんすね〜!これはイタダキざんすよ〜!!」 

薄暗い蛍光灯で照らされたバラック小屋の中でニセジローは叫ばずにいられなかった…


 

 
ニセジローの発見したのはマルサン商会の2001年宇宙の旅「オリオン号」でした。
極光の頃後編を見た方から「日本でそんなプラモがでていた訳がない プロテウス号との間違いだろう?」とのメールをいただきましたので ブラックシマダさんから拝借して写真を撮らせていただきました。

上はエアーフィックス社のオリオン号で最近も再販されました。
下は問題のマルサン商会のゼンマイ走行(!)オリオン号です。 

当時の映画のポスターをあしらった箱を開けるとイキナリ!青〜いプラスチックで成型されたプラモが出てきます。

それっぽい機体にホイールとゼンマイボックスが見えます。

 
箱の横には劇中のオリオン号とエアリーズ号そしてディスカバリー号の写真があります。

当時のプラモのこの部分にはそのシリーズの姉妹品ラインナップが描かれていることが多くオリオン号を買ったお子様は「すごいや〜木製探査船ディスカバリーも発売されるんだなー(学校から見に行った映画の意味は分からなくて途中で寝ちゃったけど)おこづかいためなくっちゃ〜」と思ったに違いありません。
当然のことながら5年経っても10年経っても売り出されることはありませんでしたが…

この解説を見ると2001年は33年後とあります。

クラークやクーブリックは明るい未来としての2001年描いていましたがここへ来て実際の「2001年」はいい事ばかりではなかったなあと少し残念に感じてしまいます。

 


ゼンマイはゼンマイボックスに差し込んでつめをドライバーで曲げたら機関部は終了。 焼き留めのような子供には難しい工程がありませんでしたが箱には「難しいところはおうちの方に手伝ってもらいましょう」みたいなことがよく書いてありました。

とほほほなゴムタイヤをシャフトに差し込みます。 
この頃のゼンマイまわしには写真のような穴が開いておりましたがあの穴は何のために開いていたんでしょうね? 紛失しないように紐を通して柱に打ちつけた釘にぶら下げておくためのものだったのでしょうか? 

今は亡きパンナムのステッカーがついております。 パンナムのデカールをつけることが商標上できないので今再販されているエアフィックス版にはけったいなデカールが付いています。 
デカールだけ個人的に作りましたって売られていたことがありました。


 

さて機体をあわせて眺めて見ると噂どおりいかにも映画のポスターイラストをみて作りましたという感じです。 
横から見ているとまあまあ良いかなぐらいに見えますが…

 
上から見ると羽根の大きさがかなりアンバランスだ〜。 そしてこの機体に先ほどのゼンマイボックスがついて黒〜い粗野なゴムタイヤが横からのぞくのである。 そしてゼンマイでジャーっと走ったならば…う〜んクーブリックもアーサーCクラークも尻こ玉がぬけてへなへなと座り込むに違いない。 
このセンスでディスカバリー号もイッといて欲しかったです。 

ちなみに2001年宇宙の旅製作時のメカデザインは当初、日本の手塚治虫のところに話がきたらしいが あっさり断ったらしい。 
手塚氏は何故に断ったのか20世紀の謎のひとつです
 

 
むかしの絶版プラモなど絶対開けて見てはなりませんよというのが(元々分かってはいたのですが)今回の教訓です。 ということで箱を開けて組むならばこっちですよというのがエアフィックス版です。 
少しまともなプラモデル屋さんへ行けば簡単に手に入ります。

しかしこのカラーリングは誰が考えたんじゃ責任者出て来い!
 

 
大まかに組んだらこんな感じです。 
結構良い感じなのですがマニアさんには「エアーフィックス版はずんぐりむっくりしている。やはりオーロラ社のオリオンの方がカッコいいに決まっているとくに初版はモールドラインが映画に忠実だ」なんて言われていてマッハIIIの初期型神話みたいで情けないですね。 
でもオーロラ版も再販して欲しいなあ…
 

マルサンのオーロラ号提供は極東ケンリツクではなくブラックシマダさんでした。 

袋破いちゃってごめんね〜



 


 
オリオン号を発見し興奮しているニセジローの背後から突然不気味な笑い声が!

「ワハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

ニセジローは恐怖した。 
バラック宝物殿を狙っていたのをジローに気づかれて先回りされていたかそれとも他の侵入者か?不気味な笑い声は続く。 ニセジローの首筋を冷や汗が伝って落ちた。

「ワハハハハハハ…ハハハ! クックック…ひい〜ヒイ〜ひ〜」

…っと どうも笑い声が変だ。 襲ってくる様子も無いので恐る恐るプラモの山の向こうを覗いてみた。そこにはいつぞやからかジロー模型にたむろするようになったヱリス狂のKammyさんが倒れていた。 口には泡をためもはや呼吸も絶え絶えだ。

「Kammyさん ど どうしたざんすか?何があったざんす?」

とっ 鳥をみた…」がくっ・・ Kammyは息絶えてしまった。 どうも笑い死にだ。 どうせお笑い記事だ。

「なにがそんなにオモロかったざんすか?」

ニセジローはKammyの手から模型の箱を取り上げた。

「な 何ざんすかこれは!」



 
 

Kammyさんが発見したのはいにしえのブルマーク社の野鳥シリーズ「まがも」と「こうらいきじ」でした。 

なんやこれ〜こんなプラモどないせ〜っちゅうねん!

ブルマークは倒産したマルサン商会の路線と金型を引き継いだおもちゃ模型会社でしたが海外の模型のパクリが多かったマルサンの体質も引き継いでこんなラインナップも出しておりました。 

アメリカンワイルドライフシリーズ!第一弾「まがも」。 太陽を背に逞しく羽ばたく「まがも」の雄姿をボックスアートにあしらってあるぞ。

 

組みあがると飛行状態のまがもがディスプレースタンドでバッチリ決まる! でも設計図は思いのほか簡素だ。 パーツ分割やラインナップがいかにも海外の模型の海賊版ぽいぞ…

袋から出して少し部品を合わせてみた。 

この絶妙なるパーツ分割といい恐らくは海外のプラモのライセンスかパクリだったのかな…。 そういえばブルマークは人体解剖プラモも出していたなあ。 あ!「驚異の乳牛」もブルマークか。もうどうにでもしてくれ〜。

シリーズナンバー2は「こうらいきじ」だ…。

この野趣に満ちたフォントを見よ!

内容は…以下同文。 

でも「まがも」に比べるとパーツが多く一度袋から出したら箱に収まらないぞ〜。 

 

 

如何にもてきと〜そうな塗装説明。 
「色ぐらい自分で勉強して塗ってくれ」と叱られている気がします。 

逆にいうと今のガン○ムなんかグンゼの何番を使いましょうといった感じでメーカー同士の繋がりがガッチリと見え隠れしますのでこの頃の方がよかったのでしょうか…

 
こうらいきじ と まがもの他にも 白頭わしがあったらしいがいやはやもはやご馳走様でした・・・。

しかし何故にこのラインナップになったのかも今更謎のままですね。 
アメリカ人の好きな鳥ベストスリーがこの三種なのでしょうか。

当然のことながら野鳥に版権は不要だ。 ケンリツクも東北○社もオフィスアカデミーも天下御免おかまいなしですね。

なんと今でも鳥模型は売られていました! キツツキだ!! 密かな鳥模型ファンがいるということだろうか!

これで当ジロー模型も絶版模型賛歌HPではないことを証明できる…しかし時遅し、このグンゼの鳥シリーズも見本市での注文分しか出回りませんでした。 他にはふくろうやハチドリかなんかがあったと思います。 鳥模型ファン(いるのか?)は急げ〜♪

今も売られている鳥模型ですが袋を開けてみても、う〜ん30年前の「まがも」とかとあんまり変りがないぞ…。ウッドカービングの鳥とかと同様に勝負したかったのでしょうね。 

たしかにキレイに塗装するとカノジョの家の下駄箱あたりに飾ってもらえるかもしれませんね。 まあいいか…。

 
 


  

「ぎゃはははははは〜」
ニセジローは 笑いが止まらなかった。 このままではKammyさんと同じ運命をたどってしまう…。 薄れゆく意識の底で「生き延びるざんす 生き延びて自分の店を持つざんすよ〜!」と叫んだ。
ひきつった腹筋に手を置きつつ右手にはマルサンのオリオン号(と まがも 高麗雉)を抱えて立ち上がった。

「Kammyはんの意思はミーが引き継ぐざんすよ〜」

にせジローは凍てつく板塀を乗り越え小さく灯る街燈に目を向けた。 吐く息の向こうに街の灯が見える。 その闇の向こうへ顔を上げずに駆け出した…。 
 
 


 
 

 
 

ジロー模型 鳥をみた 完

模型業界の必死の努力にもかかわらず売上を落とすジロー模型店 そして子供らが求める模型とは一体何か?
組んでしまった絶版模型に明日はあるのか? そしてニセジローの「店」がジローを襲う!
危うし ジロー!

次回 「ゴムで遊ぶ」

乞うご期待!