よみがえれ H2c!
 

by FUJIWARA 

1996年のとある月に調子のでないH2cを南氏のもとに持ち込みました。
「よみがえれ H2c!」はそのときのH2cの整備と試運転の状況を書き留めたものです。

はじめにここに登場する人物を紹介しておきます。
藤原
 記事を書いた当人です。
 メカの理屈は判るのですが整備は常に他人に頼っています。

 大阪マッハクラブの専属メカニックです。
 マッハのトラブルは彼にかかればたいていのものが直ってしまいます。
松谷
 大阪マッハクラブの会長です。
 関西弁がきついので言葉だけを聞くと恐いのですが、優しい人です。


1996年の大阪トリプルのツーリングでの会話です。(貝がら荘にて) 

xx月xx日

藤原

「某社にいくら整備を依頼しても調子がでない。」
「整備を依頼してもう、かれこれ3年になる。」
「しかも一度のツーリングでエンジン不調をきたしてしまう。」

「一度、自分に預けてくれますか。」

藤原

「ぜひ、お願いします。」

南さんに見てもらった結果は表紙(上)の写真の通り。
シリンダ内の燃焼ガスが吹き抜けピストンはおろかクランクケース内までタールで真っ黒になっている。
ピストンリングはタールで固着し機能していなかった。

xx日xx日

「調べてみたところ、マフラーの仕切板が外れています。」

「また、シリンダのコンプレッションが異常に高いのが気になります。」

「これらの異常をまず正常に戻すことから始めます。」

「藤原さんは吸気系のセッティングに問題があると考えているようですが。」

「パワーフィルター、メインジェット、ジェットニードルのセッティングは大切ですが、このような症状にはなりません。」

「これは、コンプレッションの異常が原因と予想します。」

藤原

「どうすればいいですか。」

「仮対策ではありますが、シリンダヘッドガスケットを複数入れることで対応しましょう。」

藤原

「何枚くらいいるのでしょうか。」

「1番シリンダのコンプレッションが12.5kg/cm2、2番シリンダのコンプレッションが13.0kg/cm2、4番シリンダのコンプレッションが14.0kg/cm2もあります。3本がばらばらでかつ、異常な高さのコンプレッションを示しています。標準値は10.0kg/cm2です。おそらく、1枚のガスケットで1.0kg/cm2くらい下がるでしょうから1シリンダあたり2〜3枚あればいけるでしょう。しかし、これで走るのが不思議です。」

藤原

「さっそく発注しておきます。」

xx月xx日

藤原

「シリンダヘットガスケットが手に入りました。」

「まずは、テストで1番のシリンダヘッドガスケットを1枚増やしてコンプレッションを測定してみましょう。」

「作業が終わりました。5kmくらい走ってきてエンジンを暖めてきて下さい。」

藤原

「走ってきました。」

「じゃ、測ってみますか。」

「予想どうりじゃないですか。1枚で1.0kg/cm2さがっています。」

「それでは、2番シリンダには2枚追加、3番シリンダには3枚追加することにしましょう。」

「3番シリンダはシリンダベースが何mmか削ってあるので本来ならベースガスケットを入れるべきでしょうがね。」

藤原

「アルミ板を購入して作っておきます。」

南さんの整備作業中に突然の松谷さんの訪問がありました。
また、南さんの奥さんからカステラと紅茶をいただきました。
 

松谷

「まいど。ガンバッテまんな。」

藤原

「あっ、松谷さん。こんにちは。南さんにバイクを見てもらっています。」

「シリンダ内のコンプレッションをヘッドガスケットで調整して正規の圧にしました。」

「雰囲気としては、本来の性能がもどりそうです。」

松谷

「よみがえるKH750やな。」
 後期型のH2を松谷さんはKH750と言っている。

「よみがえれ!71馬力。3馬力たらんけどな。」
 後期型のH2は71馬力、初期型は74馬力だった。

「MACH III 750のエンブレムがあるけど、サイドカバーに貼ってみる?」

藤原

「どうせ71馬力。遠慮しておくよ。」

「さあ、試運転です。乗ってきてください。」

藤原

「了解!」

「クウォーーーーーーン クウァーーーーーン」

  :

「グォングォングォングォングォン」

「しゃくりが無くなって明らかに良くなっています。」

「なんだか、嬉しくなってきました。」

「諸悪の根源はコンプレッションにあったんですね。」

「もう一度、コンプレッションを測定します。」

「バッチグーです。予想どおり、3番シリンダも11.0kg/cm2にさがっています。」

「それでは、次にキャブのセッティングをとります。」

「k&Nパワーフィルタを使用の場合はメインジェットは125を指定しています。」

「マニュアルはあてにならないことがありますが、とりあえず指示どおりに設定しましょう。」

「さあ、テスト走行してきてください。」

松谷

「カーッといけよ。」

藤原

「グアーーーーン ゴボゴボゴボゴボ・・・」

  :

「ゴンゴンゴンゴンゴン」

「ゴボゴボいって吹き上がりません。」

「全開かまして下さい。」
 アクセル全開で走って下さいの意味

松谷

「ビビッてどないすね。」
 恐れず勇気をもって臨めの意味

藤原

「では、もう一度。」

「グアーーーーン ゴボゴボゴボゴボ・・・」

  :

「ゴンゴンゴンゴンゴン」

「やっぱり、ゴボゴボいって吹き上がりません。」

「ちょっと代わってください。」

   「クウォーーゴボゴボゴボ・・・」

「ガスが濃すぎるようです。メインジェットを120におとします。」

「さあ、もう一度試走です。」

「藤原さん。かましてください。」
 かます・・・全力を尽くすの意味

実は、このときメインジェットを交換したのですが、
その後、エンジンがまったく吹けなくなりました。
原因がわからないまま、再度、キャブレターの組み直しをしたところ
エンジンは息をふきかえしました。
ここで、試運転再開というときに、クラッチワイヤーの終端部の
部品(clutch release)が破損して運転不能に陥りました。
南さんは、キャブレターの不調はクラッチ不良を告げるための天の声だったと言いました。
たしかに、試運転途中にクラッチ不良をおこしていたら、
運転不能で立ち往生しているところでした。
さいわいなことに、南さん宅には当パーツが存り、即、補修ができました。
当パーツはカワサキからは入手不可のパーツとなっています。
当パーツの交換にあたって、エンジンスプロケットを取り外す必要があり、
チェーンまわりの整備も行ってもらうことになりました。
何から何まで迷惑かけます。南さん、ありがとう。

南さんの奥さんにご主人にお世話になっていることのお礼を言いますと、
「ほとんど、変態の領域です。」と言われました。
変態?最高にすてきです。

 

  


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