ロングツーリングに出る機会を得られなくなっているので バイトに行くアシとしてもマッハに乗るようにしている。
当然駐車するスペースを充分取ることができるところにしか乗っていかないようにしているし いたずらされにくいところへ停めたいといつも思うが
とうとう 避けたかった事故に遭った。 バックしてきたトラックにぶつけられてしまったのだ。
シラを切るおっさんとの確執はここでは書かないことにして (ご心配なく 彼はこの事件をきっかけとして自滅した)
とにかく 復旧させることを優先させることにした。
今回のダメージは跡形もなく修復し その他各部分も見直して 事故の前よりも良い状態にまで引き上げようと考えた。
潰れたスピードメーターはCB社に修理に出し 多少の誤差もあったので調整もしてもらうことにした。 チェンジペダルは インターネットでR社から購入しメッキ出しをした。
曲がったヘッドライトステーはモトアートに出して板金の上 塗装し直してもらった。 グラブバーは中古を外国から買いつけることにした。

KAの塗り分けメーター
ムチャかっこえ〜!!
文字盤を製作していただいた直後に こんなことになったのは 自分の管理能力の低さだと反省したが 製作していただいた方にはもはや壊してしまった(周りのメッキリングが凹んだ)と言えなかった。
そこで CB社にリング交換と 内部メカの調整をお願いした。
結果的には 見事復活し 新たな距離を刻んでいる。
さて 最もネックになったのはミラーである。 KAの純正ミラーは昔から欠品で バックオーダーにも掛っていないのだ。 KAのミラーは
鏡をボールジョイントで留めているものではなく プラスネジクランプでバーエンドに固定するものだ。
これが
「まあ後ろを見るなら これで適当に見ろよ」
とぞんざいに言われているように感じるほど無愛想でかっこ良いのだ。(実際にはブレてしまって見えないのだが)
かつてW1SA用のミラーを付けてみたが今一つだったので メッキが薄くなり クランプのネジ部分に錆が浮いても大事に使っていた。
しかしこの事故で 見るたびにムナクソが悪くなる擦り傷が付いてしまった。 おそらくは修復は不可能だろう。
少しでも輝きを取り戻そうと くすんだバーをピカールで磨いたところ余計にメッキが薄くなってしまったトホホな過去や 大雨の北海道で
締めても締めても緩んでくるのを ドライバーで直したが ネジの頭が錆びてきたことが思い出された。 長年愛用し 愛惜の念が込み上げるが
このまま毎日この擦り傷を見るのは精神衛生上良くないので 取り外すことにした。
さてどこから代わりのものを調達しようか。 身内にパーツをねだれば 誰かが出してくれるかもしれない。 しかしその誰かにとっても
貴重品には違いない。 ここはカネが掛っても すっきりゼニの取引でいこうと考えた。
近頃はトリプルユーザーには便利な世の中になったと思う。 これはこの世界だけでなく 別の分野でもそうである。
その昔 ジャズの名盤レコードは京都や梅田の 直輸入ショップへ行かなければ手に入らなかった。
しかも流通が悪いために値段も高い上に 一度躊躇すると 二度と手に入らないことになった。
お店に予約金を払ってあっても 永久に入荷しないこともあった。 一度聞いてみたい名盤は マニアの人に拝み倒して聞かせてもらったものだ。
これら 名盤は 大きいCDショップへ行けば 常時在庫されている。
なんと良い世の中になったものだろう。
しかし いつでも手に入るので 気安く貸してあげて帰って来なくなったり
今度見たときに買おうということになったりする。
案外マッハのパーツなんかも そんなもんかもしれない。
探している時は見つからないものなのだろう。
レコード盤に比べて 本当にコンパクトになったし 傷み難くなったので
お店も在庫しやすくなったのだろう。
レコードを山ほどコレクションしていたファンも 初めはデジタルな音だとCDに
批判的だったが 最近は レコードは押入れにしまって CDを聞いているらしい。
その人の家に行く時は 風月堂のマロングラッセと ブラジルサントスの豆を手土産とし 家に着いたら
二匹のポインター犬を褒め称え 応接間に通されたら ナカミチのオープンリールデッキを絶賛しなければならなかった。
次は 「前回聞かせて頂いたキースジャレットのパリコンサートは 夢に出るぐらい素晴らしかった。 本日は心苦しいのだが ケルンコンサートをご拝聴できないものか」と申し出るのだ。
彼らには 雑誌の読みかじり知識は通用しない。 むしろへそを曲げられるだけなので 話しを伺うようにした方が上手くいったし 勉強になった。
ひと講釈終わると 彼はいよいよ膨大なコレクションの中から 盤を取り出して ジャケットを見せてくれる。
レコードスプレーを吹き付け 静電気除去機をくぐらせて ワイプし ターンテーブルに載せて 真空管アンプのスイッチを入れたものだ。
真空管が暖まるまでに
「はじめはスタンダードから入ったが 結局フリー系に落ち着く」
とか…
「ジャズは 慣れるとボーカル入りは邪魔になってくる」
といった 彼の喜びそうな話しをした。
それほどまでしなくては 聞くことが出来なかった つまりはカネだけでは辿り着けなかったのだ。
今では チョット気の利いたCDショップ(レコード屋とは言わないらしい)へ行けば まぼろしの名盤といわれたものが 簡単に手に入る。
拝み倒して聞かせてもらった盤を 2000円ぐらいで買うたびに 今では彼(と彼の莫大なコレクション)はどうしているのかなあと思い出す。
これと同じように トリプルの部品も 大御所を拝み倒さなくても お店に電話して買ってあげれば良い時代になったのだ(その代わり値段が…)。
ナナハンの免許がゼニで買えるようになったぐらいである。
もはや金で買えないものはなくなった(決して本心ではそうは思っていない) ので 買える物はがんばって働いて買えば良いのだ。
考えの及ぶところはどこも在庫していなかったので 思い切って 絶版旧車専門店へ電話してみることにした。
ここの電話番号は その辺の雑誌によく書いてあったので 気軽に掛けてみることにした。
電話には女の人が出た。
KAのバックミラー できれば新品が欲しいと言う旨を伝えた。
社長さんは男の人だと聞いていたので その辺で代わってくれた方がスジ者同志の話しが出来て良いかなと思った が しかし…
「は?KAってなんですか?」
500SSのことです。
「は?500SSって?」
初期の500SS H1マッハVのことですよ と 慎重に答えた。
しばらく間があって…
「あ〜あ〜 エグリのことですね! んでエグリのなんですか?」
だからバックミラーの状態の良いものを探しているのですよ と 努めて冷静にゆっくりと答えた。
「うちで買われたエグリですか?」
(あなたがたが お店を始める前から乗ってるんだ〜と答える代わりに)いえ 違いますと 答えた。
「ちょっと待ってください」で保留になった。 しばらくして またその人が出たが
「あの そういう物は うちでは扱っておりません。」とのことだった。
ではKAのフィールドローターは有りませんかと訊ねたが 今度は即断で
「置いてませんねえ」
そこで 丁重に電話を切った。
チック(コリア)は RETURN TO FOREVERまでですねえと ジャズの御大に知ったかぶりをしたら
急に気分を害されたことを思い出した。
今 自分はあの時の逆の気分を味わっているのかもしれないな と 遠くなった昔を思い出した。
数日後 思い余って パーツバイヤー雑誌によく広告を載せているマッハ専門店に電話してみることにした。
広告を眺めると 殆どが¥ASKと書いてある。
まるで 入った寿司屋が すべて時価と書かれているような恐ろしさである。 しかし 今や自分は独立した大人なので 口に入れたマグロが一貫5千円したとしても
顔色を変えずカードで支払いをして…
「美味かった また来ます」
と店を出る芸当ぐらいは出来る。
高々ミラーごときがナンボしたとしても 知れてるわいと自分をなだめた。
前回のことがあるので かなり緊張しつつ電話をしたが 10コール以上鳴らしても誰も出なかった。
掛け間違いかと思い 再びナンバーを見ながら掛け直したが 出ない。
う〜ん お昼休みか となぜかホッとしつつ 受話器を置いた。 その日の夕方 もう一度電話してみたが やはり誰もでなかった。
翌日と その翌週にも電話を入れたが 残念ながら誰もでなかった。
たまたまタイミングが悪く出られなかったのかもしれないが 今更手紙で問い合わせをするのも馬鹿らしいし シラけてしまい そのお店は諦めることにした。
「KHは下取りでもいらない」と言って憚らなかったマッハ専門店がベンツ屋にくら替えしている。
世の中不景気なのだ。 マッハ専門店なんて それほど需要がある仕事だとも思えないので どのお店も
もっと商売気をだして頑張って欲しいところだ(と激励しておこう)。
ここは 大先輩に相談するところが良いのではないかと思い W1クレージーズの泰山さんに訊ねてみることにした。
クレージーズの活動の素晴らしさは 最終ラウンドで取り上げる予定であるので 多くはここでは書かないが
困った時はいつも良いアドバイスをいただけるので 外人さんに送る部品を注文する際 それとなく相談した。
クレージーズが用意してくれるクランプ式ミラーがあるそうだ。
これがなかなかカッコイイし 1200円で 2000円ぐらいの価値があるぐらいおススメであるとのことだった。
スエーデン駐在中の青影は ミラーがないので これを付けてもらおうと考えて4本注文した。
送られてきたミラーは バッチグー(死語)で 何よりも値段が安い!
実はスズキの純正なので 今でもスズキに注文したら手に入るらしく 確かにスズキのお店で 1100円プラス消費税で手に入れることが出来た(クレージーズの素晴らしいところは
手数料と称するチンケなお金を取らないことだ。この志の高さに感激してしまう)。
このミラーを見つけて 部品番号を調べて 情報として不特定多数に提供して貰えるところがスゴイのだ。
お店で56500-08600と注文したら 手に入るクランプ式ミラー
何に使われているミラーなのか不明。
今でも 全然違和感なくKAに付いている。
雑誌を見ていると 九州のトノの息子さんも これをKAに使っていた。
蛇の道はヘビとはよく言ったもので みんな同じようにしてやっているんだなあ。
W1のサイトなんかを見ていると
「W1クレージーズとは どっかのお店だと思っていました」
と書いている人もいて やりきれない思いをすることがある。
非営利的にやっているのがスゴイのだ。
営利的にリプロを売る店もけっこうだが クレージーズの意思を踏みにじって
商売する店は許さない。
早速 KAに付けてみることにしたが ミラーの柄の長さもバッチリで なんの違和感なく収まった。 長い付き合いが出来そうだなぁと感じる逸品である。
それは微妙に形は違うかもしれないが 楽しく乗って走り続けるには別になんら問題がない。 これにて一件落着!
このところ各部の磨きが足らなくて なんとなく くたびれた感じがした白影もこの機会に細部に手を入れたことで 再びパリっと仕上がった。
不慮の事故には腹が立ったが これも忘れる(少なくとも思い出さなくてもよい)ぐらい良くなった。 ミラーの角度も慣れてきて 違和感も無くなり
元の調子に戻ってきたところで…
ある日 いつもお世話になっている方から 宅急便が届いた。
箱を開いてビックリ!!
KAの純正ミラーだ!
しかも当時もんの箱入り新品だ!
KAのぼろシートを進呈したお礼らしいが…。

ありがたや ありがたや!
息子も思わず手を伸ばす新品ミラー
部品は使ってナンボじゃといつもほざいているが
今回ばかりは よ〜使えない…
誰か叱ってやってください!
困った!こんなええもん よ〜つかわんー!!!
ああ〜どうしよう!
パーツ虎の穴 ゆくは地獄か極楽か…。
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