第5ラウンド 実際に海外から買ってみよう 其の一



ある日 マッハファンの重鎮から「ビッグホーン350の1.0mmオーバーサイズピストンリングが手に入らないかなあ」
とメールが来た。 氏の友人のビッグホーン(F5)が0.5mmから焼き付いたので 1.0を入れることになったが
リングだけがどうしても手に入らないらしい。 彼ら大先輩が探して手に入らないなら余程のことだろうと思われた。
実際 10年ほど前にバイソンにちょっとだけ乗ったことがあったが その頃でもワイヤー類すらすべて揃わなかった記憶がある。 メーカーもマッハシリーズのような人気モデルに対しては(たとえピストンだけ出てリングは出なかったりしても?)待遇良くしている方なのかもしれない。


バイソン350 F5
こんなキレイなカッコイイ単車を復活させようというなら 頑張ってみようかとも思うよなぁ。 実際この写真は 外人さん方にも大ウケであった。
写真を見るだけで オーナーの深さが見えるのは万国共通であり
文字どおり言葉は不要だ。



このテのダートバイクは海外の方が人気がありそうなので イギリスでW3のレストアをしているPHIL氏と スェーデンの
Hakan氏に相談してみることにした。 すると 個人で莫大なパーツストックを所有しているファンの方が
当時のダートバイクのパーツと交換しても良いと言っていると連絡が来た。
サスガ!ある所にはあるもんだなあと感心した。 しかしリングは自分が欲しい訳ではないし 交換する部品も期待に
そえそうにないので丁重にお断りした。 本当は 日本人が自分の国の中では食い尽くしたので 海外の個人的趣味で
ストックしてこられた部品を買い漁っている と思われたくないのもあった。
(彼は後日F5の写真を送って リングを手に入ったことを伝えたが カワサキのパーツで困った事があったらまた相談して
くれと気持ちよく言われてしまった。 これでは立場が逆だよなあ。 とほほほ〜。)


次はアメリカのパーツショップから連絡が来た。 メーカー純正ものと ワイセコのものがあるが買わないかとのこと。
メーカーのデッドストックが90ドルと言った(1ドル105円ぐらい)ので まあ妥当かと思われた。
しかし彼の店はカード取引をしていないので 銀行振込をして欲しいと…。


青影計画で海外送金を初めてやってみたが 実際面倒だった。
わざわざ平日に銀行へ出向き 手続き用紙に記入して 今度は不慣れな行員さんがあちこちに電話して手続きを終えるのを他の客には 「あんた ややこしそうなことしに来んなよ」という目で見られながら イライラして待たなければならない。 自分の部品でもないので チョット危険でも手軽なクレジットカード取引がしたかったのだ。

次は Hakan氏がイギリスの旧車ショップZパワーに問い合わせてくれたところストックがあり 日本までも送ってくれるとのことだった。


こんな激レアー部品が値段もそこそこで手に入るとはいい世の中になったよなぁ(こればっかり)。
後から外国人のみなさんから聞いたところ 日本のショップは英語でメールを
出したりしても絶対に返事が来ないし 来ても海外には送れないの一言で
オシマイらしい。
日本のショップも頑張って欲しいとまたゲキを入れておこう。


リングが57ポンドということなので ニュースで聞いたうろ覚えレートで換算して、だいたい1万円ぐらいなので
貴重なパーツだしOKの範囲だろうと勝手に判断し話しを進めた。
最も大きな問題は そのお店がクレジットカードの番号を教えてもトラブルにならないかということだった。
金銭信用なので Philさんに相談してみた。 するとZパワーは 旧車界では有名なDAVEと言う男が
あまりにもパーツストックが過ぎて 自分一人では一生使っても使い切れなくなったと悟り カミさんの手前、店を始めたんだとのことだった。 英国旧車ファンの間でも信用が深いとお墨付きだったので 安心して取引することになった。
人の部品を注文するだけでは面白くないので KA(と書くだけで通じる)のキャブはないかと訊ねてみた。
一見してボロく スロットルバルブが欠損しているが 50ポンドでよければ一緒に送ると言ってくれたので 是非と返事をした。



大事なことであるが カードの番号はメールで送るのはたいへん危険なことなので ファックスで送ることにした。
電話でDAVEさんと世間話をして ご面倒を掛けますと一言お詫びをしてカード番号を伝えればいいのだろうが
それほどの英会話力は無い。 辞書片手で文章をデッチアゲればいいし 向こうも自然な英語を期待していないので
メールで会話するのは割と日本人向けなのかもしれない。 要は用件と気持ちが伝わればいいのだ!
ワープロでクリスマス定型文を打って さてカード番号は…と書いてファックスした。
(初めに流したファックスはカード番号を打ち間違えていたので 私は英語だけでなく数学も成績が悪かったと書きなおして再送した。)
12月中旬に送ったと言う連絡があり 部品が手元に来たのは1月初めだった。
航空便だったが クリスマスシーズンだったので時間がかかったのだろう。
クレジット会社の引き落としが部品より遅れて届いた。



品名

ポンド

日本円(1ポンド=170.150円)

0.1mmオーバーピストンリング

57ポンド

9699円

中古KA用キャブ

50ポンド

8507円

送料

13ポンド

2212円

合計

120ポンド

20418円


リングは メーカー純正品が届き キャブはKAの初期のいわゆる穴あきキャブであった。
DAVEさんの言う通り キャブはスロットルバルブとジェット類が欠損していたが 送料を折半したとして1万円で手に入ったなら まあ満足できる。 リングも彼らが八方手を尽くしても見つからなかったものなら喜んでもらえるに違いないと思い 早速、郵便で送った。


しかし 支払ってもらう金額を算出すると 冷たいものが背筋を走った。
高々ムカシの二枚リングごときが1万円もするとは…。 冷静に考えると高い買い物だ。
ファックス代や その他くだらない手数料は1円も貰っていないので 怒られる筋合いはないと堂々と言えるが
なじられる原因があるとすれば 概算で1万円ぐらいすると連絡しなかったことだろう。
しかし結果的には気に入ってもらって ついでに手持ちのSTDシリンダー用にSTDピストンとリングも手に入らないかと
返事が来た。
少々値段が高くとも 手に入らないものは仕方がないと思ってくれたのだろう。
道楽も洒落と割り切れる大人同志のやりとりなので そんなところでもめることがなくて楽でいいなぁ。
スタンダードセットも純正品の在庫があるらしいので すぐに注文した。
今度は青影計画に使うA1の外装も問い合わせることにした。
Gタンクは初期のものならある(red appleと表現されていた)が60ポンドでなら出してもよい、オイルタンクはあまり状態はよくないが 後期のグラフィックが残っているものがあり25ポンドでよいとのことだった。
A1青ぼかしのオイルタンクのグラフィックは資料を見てもない。 国内資料はライオンマークだったらしいが これもあまり定かでなかったので オイルタンクだけ買ってみることにした。 今度は一週間ぐらいで手元に来た。


箱はボロいが メーカーの当時の箱である。
DAVEさんの話しでは10年ほど前にアメリカのショップから買ったものなので
日本→太平洋→アメリカ→大西洋→イギリス→ユーラシア大陸→日本と
世界を一周して里帰りしたのだろうとのこと…。
涙ウルウルもんである。




白ぼかしの三角グラフィック350は資料写真で見たことがあったが
青の250は見たことがなかった。
デカールの寸法はKAの青ぼかしと同じらしい。
送料税金折半で6400円なら納得価格だ。
しかし何故に今ごろのバイクに こんな華のあるデザインが出来ないのだろうか?


DAVEさんに荷物がすべて無事に着いた旨を伝え 焼き付いたF5はこれで復活できると感謝のメールを出したが 彼のレインボーラインのF5写真にはいたく感激していた。
商売でやっているとはいえ 彼も我々と同じ1ファンに過ぎないのだ。
(ZパワーのHPはリンク集にあり)



品名

ポンド

日本円(1ポンド175.78円)

STDピストンリング

57ポンド

10019.9円

STDピストン

59ポンド

10371.4円

A1オイルタンク

25ポンド

4394.7円

送料

26.1ポンド

4588円

合計

167.1ポンド

29374円

日本の税金

*****

1000円


前回と同じ値段のピストンリングを買ったのに 実際には前よりも高くなっているのは 為替レートが1ポンドあたり5円
ほど円安になっているからだろう。 それに加え 今回は買い物額が高くなったので 日本の税関で1000円税金を徴収
されていた。
現在のところクレジットカードを悪用されている様子はなく 入手が困難なパーツが簡単に手に入ったので おおむね成功だったと思う。
しかし外国にしてみれば 日本製単車パーツは輸入品であり かつ、又買いにつぐ又買いしたものをストックしたものなの
で やはり結構な値段がするものだなぁとも実感した。


パーツ虎の穴 ゆくは地獄か極楽か…。




第6ラウンドも買いつけ実践編だ!
もう参りました…助けてください…ギブアップ…