クラッチレリーズの色々と レリーズのこれから…
(平成14年4月24日)

3気筒系の弱点のひとつでかつ 早くから欠品になっている
クラッチレリーズをちょっと眺めてみましょうか…

クラッチレリーズは クラッチワイヤーから伝わった力をクラッチに伝えて
スプリングを押し縮めて クラッチ板の押さえつけを弱めてクラッチを切る部品ですが
マッハ系では上の写真のようにFスプロケの傍にあります。

A1では左のように右エンジンカバーに直接ついています。
90SS系もこのような構造で ちょっと違いますがダブルやCB90なんかも このようなカバーにレリーズがついている構造だったと思います。

クラッチ板を押さえつける隙間をレリーズで調整しますが 細かい調整方法はSMや他のコーナーに譲るとして
レリーズのアームが数度回転することで 螺旋式にクラッチのプッシャーを押さえてクラッチが切れると
そんな構造です。

フロントスプロケットを外してレリーズを固定しているねじを2コ外し
クラッチワイヤーを外したら いとも簡単に取れてきます。

左手に持ったレバーがついているほうがインナーで 右手に持っているのがアウターと呼ばれています。 

インナーには螺旋に歯が掘ってあり この歯がアウターの螺旋型の溝にぴったりかみ合います。

クラッチレリーズには色々なバリエーションがありますがよく見るものではアウター側の金属製のベースに 特殊な樹脂がコーティングされてあり あたかも膝の半月板や軟骨のように
滑りをよくする構造になっておりました。

このバージョンは インナー側は金属でできているので 半永久的に使えるとしてもアウター側の樹脂の部分は 当然劣化し磨耗します。
徐々に青矢印の部分に亀裂が入り 力がかかる溝のところで空回りするようになります。
これはある日ある朝突然に来ますので 
「あれ?なんでクラッチが切れないんだろ!」となったら寿命です。
インナー側にも樹脂でコーティングしてあるものもあるようですが これも寿命が短いようです。

もう一点のウィークポイントは ワイヤーを挟んでおくところが割れてしまうことです。
赤矢印のところをドライバーで広げたり閉じたりすると 少しずつ金属疲労をきたしてワイヤーが外れたり
割れてしまったりします。

写真は インナーも樹脂製のレリーズですが 樹脂の部分が割れており
もはや空転するのも時間の問題です。
ワイヤーを固定する部分も 金属疲労で広がってしまいやすいので
広がらないように鉄板を蝋付けして補強してあります。
またレリーズの調整ねじが チェーンと干渉するためか割れており
まさしく 三重苦「ヘレンケラー」状態ですね…。

さて次はKH250についていたレリーズをみてみましょう。
ジャンク箱に入っていましたので それを出してきました。

分かりにくいのですが 矢印の部分にサークリップが入っており
インナーが抜けないようになっておりました。


 
サークリップを外してインナーを回して外すと アウターとインナーの間に金属のカラーが入っており そこにベアリングが収まっています。

 
インナーにはボールベアリングが収まる溝が掘ってあり…

 

カラーをかぶせて その穴にボールベアリングが入っています。
インナーの歯のかわりに ボールベアリングがあるという構造になっています。
ボールベアリングとアウター側の溝で接しているので 抵抗が少なく 動作が軽くなるというわけです。

ところが これら純正クラッチレリーズは早くからメーカー欠品で クラッチレバーを軽くしたいという願いはおろか
クラッチレリーズが壊れてしまった場合にはどうするかと取りざたされてきました。

軽くする目的ででも FXのクラッチレリーズの取り付け部分を加工して使うと良いとも言われてきましたが この流用定番の
レリーズもメーカー欠品になりました。


 


クラッチレリーズのウィークポイントを克服し 
かつ 動作良好なレリーズを目指して
プロジェクトH2がレリーズを開発してくれることになりました

数年の設計期間を経て 今年1月に試製零号が工作所から上がってきました。

零号は動作確認用のモックアップだったそうですが 動作に問題がないどころか
かなりクラッチ握りがかなりスムーズになりました。


4月に入り 試製初号があがってきました。

零号は 取り付けと動作を確認する目的が主だったようですが
今回は 動作に加えて耐久性も試されることになります。


零号(と勝手に命名した)は 取り付け角度に若干の自由度をもたせてあり
固定も六角ねじが用意されておりました。

零号の試験に 遠乗りしようと思いましたが 焼入れ等もされていない
鋳物のようなものなんでそれは止めて〜と言われまして 近場をう〜ろうろしておりました。

しかし これだけでも充分ストックよりも堅牢そうでしたが…


試製初号は プロダクションモデルの直前版に近いらしく 材質も A7075超硬アルミ材と
タフト処理で耐久性をあげてありました。
街乗り使用と トリプルスの行き帰りで試験して一旦製造元に返還されて
磨耗状態のチェックを入れて さらに改良が加えられるということです。
赤影につけてテスト中なのでトリプルス会場でレバーを握ってみてください。
零号に比べてねじ切りのピッチも変更されており スパッと切れてスパッとつながる感じが増している印象です。

取り付ける前に見たところ 零号よりもインナーの自重で
スルスルと回転して入っていくところが驚き!の低抵抗でした。

もともと クラッチレバーが重いと(バーネットのスプリングを入れていたときでさえ!)感じたことは無かったのですが
FCCの硬めのスプリングを入れていても ダブワンのへにゃクラッチより少し重いぐらいで かなり楽になりました。

クラッチの軽さというのは 必ずしもレリーズだけではなく クラッチアッセンブリーや スプリング
さらにはワイヤーの取り回しや ワイヤーの抵抗も当然関与しているに違いないので まずはその辺りから見直す必要があるんでしょうが
レリーズの選択肢が増えること まずそこから有り難いことだと思われます。

実際量産に入るのは夏以降らしいので 今しばらくお待ちください。





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