6万キロ達成記念 何度も書いてますが 本当は単車を触るよりもただ乗っかって走るのが好きです。 ある程度の基本的な整備は自分でしないと通勤中やロングツーリング中にトラブルが起こっても対処できないのでやっているに過ぎないかもしれません。ただし原付にしても W1にしてもFIAT500にしてもある程度は自分でしないと信用性の高い一台に高めることができないことも良く知っています。 キャブレターに関しては正直未だに自信がありません。それでも少しずつ自分で触るようになってある事に気が付きました。正しくバラして掃除して元どおりに組むことで悪くなる筈はなかろうということです。メインジェットの番数がどうのこうのとか論ずる前に ノーマルのセッティングをきっちり出せるように手を動かしてみましょう。とくにマッハシリーズのような旧い単車は まずはストックの状態の(当然新車の頃の調子が取り戻せるとは限りませんが)セッティングを出してやるのが肝腎です。エンジンの問題が無ければアイドリングが不安定であるとかオーバーフローするとか4千回転あたりで必ずもたつくとかエンジンが温もるとかぶって走らなくなるとかいった不調が改善されるかもしれません。 by SHIRAYAMA |
キャブレター整備 オイルポンプの不調で焼き付きを来たすことが多いと以前に書きましたがもう一つ多いのは二次エアーの吸入でしょう。キャブやエアクリーナーの接合部の緩みやキャブの蓋の緩み等を防ぐことで焼き付きを予防しましょう。 基本的なキャブの分解や掃除に関してはある程度は個々人の経験と知識に委ねたいところです。全くしたことのない方は単気筒の原付等でトレーニングしてください。一応単車整備の参考書を揚げておきます。今回もっと良い参考書がないか数冊買ってみましたがこの本に勝るものはありませんでした。ノーマルのセッティングを出す程度なら充分な本です。(写真1) 前置きが長くなりましたがキャブレターの作業中は火気厳禁ですので必ず守ってください。
1 キャブレターを外す まずはガソリンラインを外します。KAやH2は負圧コック式なので そのまま外してもコックからガソリンが出続けることはないはずです。ガソリンが止らないならダイアフラムのガスケットパッキンの交換が必要です。また右端のキャブから負圧ラインがでてコックと繋がっていますがくれぐれもガソリンラインと間違って繋がないようにしてください。 間違うとクランクケースにガソリンが入り リキッドロックを起こします。 次にエアーインレットパイプとの接合部のクランプを緩めます。この時すでに緩んでいた場合は深く反省しましょう。クランプの緩みによる二次エアーの吸入は焼き付きの危険性があったからです。 今回は作業しやすいようにクリーナー側エアインレットパイプは外してしまいましょう。 シリンダー側エアーインレットからキャブレターを外すと
キャブはスロットルワイヤーとスターターワイヤーでぶら下がることになります。 初めてその単車のキャブレターを分解するなら一度ニードルの高さをチェックしましょう。標準はEクリップの位置は真ん中にあります。時々気筒によって位置が違ったりすることがありますがそんな場合は気筒によりエンジンの調子が違う可能性があります。油面が極端に低い場合もそのようなニードル位置にしてつじつまを合わせてあることもあります。一度ニードルを同じ高さにして調整してみることがよいかもしれません。ニードルにガソリンかすの段があるときは掃除しておきましょう。ニードルが傷んでいるときは交換です。全然違うニードルが付いていて驚かされることがありますので一度三本とも並べて比べてみましょう。
2 フロート室を開ける 次にフロート室を開けます。フロート室のマッハ系のキャブは製造過程で肉厚がうすくなる部分があり鋳造時のスや振動による亀裂で穴があいている事がありますのでボディーを洗いながら注意してみてください。 もし穴があれば二次エアー吸入の原因になるためハンダ等で埋める必要があります。(写真4-2)納得がいくまで掃除したらジェット類を元どおり組み付けます。 フロート室の4つのネジはよく破損しますので正しいドライバーできっちり押し回しで開けましょう。閉めるときだけでなく 開けるときもなるべく対角線順に緩めましょう。フロートパッキンが傷んでいるときやガソリン漏れがひどいときはパッキンを交換します。先ほど書いたように
ジェット類やスクリューの穴の掃除とかをして元どおりに組むだけなら作業前よりも状況が悪くなるはずはないとビビらずに作業しましょう。キャブレターの部品はゴミが付かないようにトレー等にのせて保管します。
エアースクリューは元に戻せるようにセコくマジックでマーキングします。その位置からどれだけ締め付けることができるのかその回転数をメモしておきます。(写真2) フロートバルブのシート面に段差が出ていないか点検してください。 フロートには小孔があいてガソリンが入っていることがありますので振って音がしないかチェックしてから組んでください。フロートを組むときに上下逆に組むことがあるので注意してください。 油面調整に入る前に基本のジェットの番数を書いておきます。吸排気系を変更していなければまずはこの番数でいきます。KAはメインジェット(MJ)が100番でパイロットジェット(PJ)が30番です。H2ではMJが105番でPJは35番です。そして350SSではMJが82.5番でPJが25番です。ジェットやニードル類はカワサキから出なくてもキャブレターの部品を置いている店に常備していることがあります。フロートはカワサキから出ないようですがスズキの部品番号13252-11010を流用することができます。この場合、必ず油面調整を行って下さい。
3 油面調整 さて、キャブレターの掃除と組みつけが終われば仕上げに油面調整を行います。油面調整は各整備本には絶対に素人は止めておきましょうと書いてあります。またサービスマニュアルにも キャブを裏返しに置いてどことどこの高さが何ミリになるように調整しますと書いてあるのみです。これではフロートの柄が曲っていたりするとかなり眉つばになってきます。今回は最も簡単で確実な方法を伝授します。これはジャムやラッキョの透明なビンをフロート室にみたてて油面を調整する方法です。 ビンの内径が7センチのビンにキャブのボディーを乗せて実際に油面がどこで止まるかをチェックします。ビンの内径は7センチチョットあればいけます。ビン選びは商品の状態では内径はわからないので金属のふたの外径にして8.4cmあればいけそうです。ちなみにこのビンはラッキョの入っていたビンです。(写真5) マッハのフロートはこれが大量生産品かと思うほどのハンドメイド臭さで 浮力の固体差があっても仕方ない気がします。油面は3つとも均等の高さであることが大事なのでじっくり取り組んでください。 フロート室を閉じた後にキャブレターを振ってみてフロートが動く音を確認してください。動きが悪いならボディーやフロート室に干渉していることがあります。次にキャブに再びガソリンを入れてみてオーバーフローやフロート室のリークがないか確認しましょう。(写真8−3)
4 キャブレターの組み付け キャブを付ける前にエアークリーナーの点検をしましょう。(写真9) キャブレターを付ける前にH2ではシリンダー側インレットパイプを点検します。ゴムに亀裂が目立つときは交換します。このインレットパイプとシリンダーの間にガスケットが一枚入っていますが傷みがあるときは交換します。ガスケットを剥がすときにシリンダー側に入らないように注意してください。 キャブレターがない状態ではオイルラインが充分に観察できますので ラインに亀裂がないかオイル漏れがないかまたエアー噛みがないか点検してください。クランクケース側バンジョーボルトの緩みもチェックしてください。 キャブレターの組み付けはキャブレターキャップとスターターケーブルを付けてからインレットパイプに接続します。くれぐれもスロットルバルブの方向を正しく入れてください。キャブレターキャップの緩みにより二次空気を吸い焼き付いた例もありますんで注意してください。キャブにガソリンを通す前にアクセルの動きがスムーズであるか点検してください。キャブレターをインレットパイプに接続してクランプでしっかり固定します。 エアクリーナー側のインレットパイプは組みにくくKAの三分割パイプはかなり組みにくいです。接続部から二次エアーを吸わないように慎重に作業します。
さて ここまでの作業で作業前に比べて何か悪い状況になったと思われることがあるでしょうか。作業前のセッティングと変わったことがあるでしょうか。普通にバラして普通に組みなおしただけなので 問題は無いはずです。むしろ掃除や油面調整により改善しているはずと思うようにしましょう。ところが変わる可能性があるのはパイロットスクリューやアイドリングスクリューの設定です。これも元々の締込みに戻してやると元の設定に戻るはずです。アイドリングスクリューはまず元々の回転数に戻しておいてください。 パイロットスクリューはKAとH2では最も締め込んだところから一回転と四分の一戻し、350SSは一回転半戻しです。その部分で必ずエンジンはかかる筈(たぶん)です。パイロットスクリューは1500回転付近で最もアイドリングが上がる位置を探します。KAやH2ではキャブの調子と内燃機関の調子にもよりますが だいたい2回転半戻しぐらいまでのところにベスト位置があります。各気筒のマフラーの排圧が手をかざして均等でかつ エアースクリューはその位置で締めこんだり緩めたりしてもアイドリングが下がるところ(つまり一番アイドリングが上がるところ)を探します。KAでは1200回転ぐらいでチャージランプが消えるところがあるので 消えるか消えないかのところでアイドリングさせると良いでしょう。 エアースクリューのセッティングは季節によっても違うし合わせる人によっても微妙に違います。ひらきなおって一律マニュアルの位置にしている人もいます。アイドリングやエアースクリュウの調整がうまくいかないならそこは単車屋に調整してもらうのもよいでしょう。この時はその合わせているところを必ず見て覚えておきましょう。 最後に各部の締め忘れがないか確認して 試走をします。いきなりは回転を上げ過ぎないように気を付けましょう。数キロ走ってプラグの具合を見て極端に焼けの違う気筒や焼け過ぎている気筒が無いかチェックしましょう。キャブレターは整備により調子が明らかに変わるので触りがいがあります。慣れれば 短い時間で整備できるようになりますので時々はキャブを触ってみましょう。
次回は要望があれば KAの電装系メインテナンスについてです。 |
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