マッハIIIピンポイント整備入門

新キャブレター編 ゼウスの鐘編パート2



各車種のキャブレターの特徴について…
H2編

マッハ系の基本キャブはH1のキャブで説明したので H2とSシリーズのキャブについても 実物を見ながら話しをしてみたいと思う。
まずはH2のキャブをみることにする。
H2のキャブはほんの初期のキャブ(刻印H2←しか書いてない)と普及版のキャブ(H2/4とか)で大きな違いがあるので そのあたりを眺めておくことにする。
H2のキャブは 同盟サイトのプロジェクトH2にも ここあたりとかこのあたりとかここらへんに充分書いてあるのでもちろんそちらも参照してほしい。


まずはH2のキャブ 吸入口からの眺めはH1のキャブと殆ど同じ。
チョーク機構や1の穴 蓋してある2の穴 MJへとつながる3の穴も同じ状態。
写真は初期キャブで プライマリーチョークは2ミリの低いものが付いているのがスロットルバルブのカッタウェイの下の隙間から見える。
スロットルバルブは初期のキャブについている「メッキバルブ」がついていたのだろうが表面のメッキが剥がれ落ちている。

キャブ全体の外観で違うのは エアーベントの通り道である。

H1のキャブでは フロート室からつながっていたエアーベント孔が 吸入口の天井に開いていない。

H1のキャブでは 「ピラミッドの盗掘口」をあけて 赤い矢印のエアーベントの通り道をドリルで通してあったが 真鍮の蓋がみられない。
青矢印のようにフロート室からは側面のニップルに向けて開いている。

このキャブは右気筒用のキャブである(負圧コックの取り出しがついてる)が エアスクリューは作業しやすいように右に移動してあるけれども アイドリングアジャストスクリューは 左キャブと同じように左側にあるというところに注目。
(これにより スロットルバルブは右用も 左中用も同じ部品だということ)

エアベント孔は フロート室の天井からニップルに向けて開いており 左右のニップルの形状が違う。
アイドリングアジャストスクリューの上にあるニップルにはビニールのチューブが付いている。
アイドリングアジャストスクリューにガソリンがかからないように考慮したものと思われる。
ほんの初期にだけ付いていたキャブには色々な問題点があったと思われ スロットルバルブのスプリングも違うものが使われている。
初期のキャブレターには写真右のスプリングが入っており 恐らくはH1と同じものではないかと思われる(不精なので出して比べていない♪)。
自由長も少し普及タイプの方が長く見えるし スロットルバルブとの関係か普及タイプの方がバネ径が太い。
推測であるが「スロットルバルブの貼りつき」に対策して 縮んだ時のバネの強さをあげてあるのではないかと思われる。
キャブレターキャップにはガスケットが入っており 糊で固定してある。
剥がして交換する時は糊を剥がして あとはシンエツKEあたりで留めておくのがよい。
初期のスロットルバルブは重くて 表面をメッキしてあり ギンギラギンに光っている。
カッタウェイは普及型キャブと同じく2.5ですが スロットルバルブに互換性はなし。
ニードルもビミョーに別物で 逆に初期キャブは色々と厄介。
「初期」という単語に弱い御仁が多いのは知ってるけど なんでも初期型がいいとは限らないと思う。
普及型はやはり対策してあるものなので やはり後期型になればなるほどボディの補強がしてあったり パーコレーション対策してあったりする。
むしろマフラーやエンジンとの相性で 初期の車輛にはなるべく初期のキャブという方がなんとなくセッティングが出しやすい気がするだけである。
普及型キャブのスロットバルブは 工業ニジカルメッキのような輝き♪
初期キャブは スロットルバルブの回り止めのピンが樹脂でできている。矢印の部分を蓋をするように圧入されている。
ミキシングチャンバー側から透かしてみると 樹脂(ベークライトか?)なので四角く光って見える。
見るからにすり減っていき易そうな気がする…。
普及型のキャブの回り止めは金属の針のようなもので 樹脂製よりも細い。
このあたりがスロットルバルブの互換性がない理由だろう。
フロート室の裏側をみると H1のキャブとちがってフロートドレーンにはニップルがついていて チューブによる逃がしがついている。
オーバーフローしたガソリンはオイルライン渓谷にたまるのではなく クランクケース下に誘導することができる。
もうひとつは紫矢印のドレーンねじがついていて フロート室のガソリンをカラに抜くことができる。
ドレーンがついているのは初期のキャブだけ?だろうか。
ここからは手持ちの普及型キャブ(左中用)を眺めながら アイドリングの調節機構を理解する。
H2/4のキャブは比較的近年までメーカーから供給されていたので 新品が手に入る機会が多い。
赤矢印は先述のスロットルバルブの回り止めで その180度反対側にアイドリングアジャストスクリューがある。
H1ではキャブレタートップにアジャストロッドとつながったアジャストスクリューがあり「スロットルバルブを釣り上げる」ことでアイドリング調整をしていた。
H2やSシリーズのキャブレターでは スロットルバルブに傾斜のついた面があり アイドリングアジャストスクリューの先端がその傾斜部分を押さえることでスロットルバルブの高さを調節している。
そのアジャストスクリューの先があたる部分を横から見た写真。

それゆえに スロットルバルブを持ち上げる→アイドリングをあげるには スクリューがねじ込まれる方向(=時計回転方向)に回すことになる。
H1は アイドリングをあげようとしたらネジが緩む方向(=反時計方向)に回さなければならないのでややこしいところである。

H2のエアスクリューの戻しは年式によってビミョーに違うのでセッティングテーブルを参照。

セッティングテーブルの話しがちょっと出たのでメインジェットをみるとH2/4のキャブには97.5がついている。
ニードルジェットはシリーズ通してO(オー)−6がついているが 初期キャブはプライマリーチョークが2ミリであり 普及型のきゃぶは写真のように高い6ミリのものがついている。
混合気がなるべくエアーの通り道の真中で混合されるように工夫した「覆い」であろうが 元々2ミリがついていたキャブにも この高いプライマリーチョークのものを選べばよさそうなものだが 実際には調子が出にくいこともあり 元々のものと同じニードルジェットを選ぶべきである。
H2のキャブはH1のキャブと違って アクセルワイヤーを遊びアジャスターの部分にクリップで固定するようになっている。
H1のアクセルワイヤーは 引っ張ると抜けるので スロットルバルブが持ちあがって「ババババーン」と吹きあがることがあったが それを防止するのが狙いだろう。
もうひとつH1のキャブレターと異なる部分はインシュレーターとの固定で H1ではベークライトの内張りの部分にインシュレーターを刺しこんでベルトで締めるようになっていたので 着脱は
「きっこんきっこん」と捻りながら引っ張りぬく感じで苦労するところ H2では ゴムのインシュレーターにキャブを嵌めるようになっているので着脱が容易である。

ところがゴムの部品は耐久性の問題もあってひび割れてくるので 消耗品として考えなければならない。
ゴムの内側に金属部品が入っているので 金型成形が難しく 小規模に作成するのは困難なので 機会があれば予備を入手しておく必要がある。

H2のキャブの最後に見ておいて欲しいのは 右のキャブはエアースクリューは右側に移動してある(当然1の穴2の穴も右に移動)けれども アイドリングアジャストスクリューは作業しにくい左側のままであるということ。
これをみといてS2のキャブをみることにする。





各車種のキャブレターの特徴について…
Sシリーズ編

…はっきりいってSシリーズは持ってないし 細かいことは知らないので 誰かに代わりに書いてもらいたいぐらい。
でもS2S3のキャブは有名な「スロットルバルブの落とし穴」ってやつをここで書きとめて アタマに置いてもらわなければと思う。
↑の写真をじーっとよく見て欲しい…。


S2(350用)をモデルにして話しを進めることにする。
アイドリング調整はこのS2のキャブとちがってGAやA1H1のような「釣り上げ式」かもしれないけど250のキャブを持ってないので比べようもなし。

S2のキャブもH2と同様 吸入口の天井にエアーベント孔は開いていない。

エアーベントはH2と同じく キャブボディ横のニップルに開いている。
これをみるとアイドリングアジャストスクリューが付いている側はチューブがついていない。
ついていないので ボディにガソリンがいっぱいついて汚れている。
こっち側はチューブがついている。
H1H2と同様にフロートチャンバー室の天井にはエアーベントの穴があいている。
フロート室の内部を大気圧と同じに保つ役割は 上のエアーベントとフロート室のドレーンチューブの穴が担っている。
A1のような エンジンカバー内にキャブが付いている場合 エアベント孔は カバーの外に開放しなければならない(けど開放して どれだけよくなった?ときかれても う〜ん…だったりする)。
H1とH2のフロートは共通部品だったがSのフロートは別物である。
S用はいまだ メーカーに注文しても出るという噂。
S2(350)はVM24でS3(400)はVM26であるが 実際外観はよく似ている。
推測でものを言うのは申し訳がないが 恐らくはキャブは同じボディで エアーの通り道(メインボアーというの?)の径がVM26の方が広いんじゃないかな。
だから350用と400用のフロート室パッキンは同じもの。
でも250はVM22で かなりかわいいものなのでフロート室の形もちょっと違うので パッキンは350用とは別物。
前々からなんパイ(パイってのは円周率ではなくて直径のこと)のキャブとか 簡単に言ってきたけど どの部分を言うんだろうかとちょっと測定。
KAのキャブVM28は この部分の寸法がだいたい28ミリなので それでVM28(直径28ミリ)というのだろうと あやふやに勝手に納得。
じゃあS2のVM24も う〜ん だいたい24ミリかな。
そういう風に納得しておく。
まあ だいたいどういう意味なのか納得しておくと「知らないで言葉を使う」気味の悪さがなくていいよねえ。
次は懸案の「スロットルバルブの落とし穴」
これはS2S3用のキャブで起こり得る とんでもない罠があるので 心してみておいて欲しい。

S2のキャブは 左用右用のキャブをシリンダー側をくっつけて眺めて見るとエアースクリューとアイドリングスクリューがちゃんと作業しやすい外側を向くように設計されているのに気がつく。
何が言いたいかというと「ということはどういうことか!」ということ。
通常キャブのクリーナー側からフロートバルブを覗くと カッタウェイがあるのでこの写真のように見える。

ではシリンダー側から見ると カットされていない側なので こんな風に見える…。

…当然といえば当然よね。

この写真をよくみてもらったら分かると思うけども 左キャブと右キャブで アイドリングアジャストスクリューを わざわざ外に来るように設計したので 左用スロットルバルブと右用スロットルバルブが別の部品だ!ということ。
まだピンと来ないヒトが多いと思うので 右キャブに左キャブ用のスロットルバルブを入れてみる…。
エアークリーナー側から見るとカッタウェイが見えていない!!

んでシリンダー側から見るとカッタウェイがみえている!

この状態で乗ると アイドリングしないで アクセルを開けると 比較的に走るようになるという 謎の現象がでます!
キャブいじるまでは普通にアイドリングしてたのになんで???になる!

えてしてキャブを整備する時は キャブレターキャップを外して スロットルバルブをぶら下げたままボディ内部の掃除をしたりする それで また元のように戻したつもりが 右用のスロットルバルブをセンターや左と取り違えると↑二つのような状況になりますよ というお話し。

同調の加減もあるし 矢印のようにどれがどのキャブのキャップか マジックでマークして整備することをオススメする♪


キャブレターの特徴についてH2 Sシリーズ編 H17年12月2日編集

このあとは油面調整〜キャブ内部の組み方〜アイドリング・同調調整〜実際のジェッティングに続きます。
とりあえずの油面調整の記事は過去の油面調整の記事を今のところは見ておいて下さい




キャブレター編 キャブレターの油面調整編につづく
キャブレターアイドリング調整 同調とり編(暫定アップ)へとぶ
クラブハウスに戻る