マッハIIIピンポイント整備入門

電装編その2

KAの発電系のチェック
はっきり言って電気は皆目と言っていいほど解らない。 しかし解らないながらに 必要が出てくれば 手を動かし 
知恵を巡らせる外ないのである。 そう!この1年ほど前に発電系のトラブルに見舞われたのだった。

充電しないと言う場合 原因となっているのは
1レギュレーターの故障
2レクチファイヤーの故障
3フィールドコイルの故障
4ヨークアセンブリー内のアマチュアコイルの断線または短略 
の順で多いらしい。

過充電になるのは ほぼ間違い無くレギュレターの故障だろうか??

細かいところはサービスマニュアルにお任せして 実際の作業で参考になりそうなところだけを書いてみたいと思う。
よって 解らないところはSMを片手に読んでみて欲しい。



まずは 左カバーを外すと電装系で大事なセクションが露出する。
正面に見える ヨークアッセンには 発電のためのコイルやアマチュアと
点火タイミングを関知するためのSG(シグナルジェネレーター)ローターと
ピックアップコイルが付いている。

まず誤解して欲しくないのは 発電系のチェックのためだけなら 
以下の写真のように ヨークアッセンを外したり フィールドコイルを外したり
する必要は全くないという事である。(外さなくてもチェックは出来る)

アマチュア(コイルのことではなく素人と言う意味)はなるべくこのあたりをホイホイと
触らない方がいいので あくまでもそ〜っと大事に触るべし!!
この写真をなぜ出したかというと ヨークアッセンから出たコード類は
ドライブスプロケットの上を通って グロメットをくぐってレクチファイアー方面へ
伸びて行くところを見て欲しかったからだ。 
かつて 何故かここで配線が垂れ下がって ドライブスプロケットに噛み噛み
されっちゃったという悲しい事故を見たことがあるからだ。
ヨークアッセンは 今や貴重なパーツなんで こんな悲惨なことのないように
緩衝していないかチェックして欲しい。
取り付けをするときは このグロメットを確実に取りつけるようにしよう。
真ん中のボルトをレンチで緩めて SGローターを外し ヨークアッセンを取りつけて
いるネジを三本外すと この三菱製のパーツは簡単に外れる。
(SGローターは取り付ける角度は必ず決まってくるのでマーキングは不要)

赤い矢印の部分は フィールドコイルに電気を流すためのブラシ(接点)で
カーボンで出来ている。 これも当然徐々に減るので ブラシがもはや使えない
ぐらいに減っている時には フィールドコイルが磁場を発生できなくなっているので 
当然発電しない。
時々見られるのは ブラシを留めているのがハンダなので このハンダが取れて
フィールドコイルに電気が流れなくなったというトラブルである。
そのトラブルに対処すべく ハンダごてセットをもって走っている人もいるほどだ。
ブラシはメーカー欠品なので カーボンブラシが使用限度(元々の全長は14ミリで
その三分の一以上摩耗した場合と書いてある…が ブラシに使用限度はここまでと
刻印の線が引いてある)を越えると交換とある。 
交換といわれても もはやメーカー欠品であるので ケースは再利用し、カーボン
ブラシの部分を マキタの電動工具用のカーボンブラシと交換する手がある。
そのものズバリのものはないが ストックよりも少し厚い物を買ってきて
(300円ぐらい?ホームセンターで売ってる)余分な部分をサンダーで削って
使用している。 しかし まったく問題なく使えている。 安上がりで良い手である。
交換後 グリーンのリード線は上のブラシに、黒は下のブラシにハンダする。
逆につけると発電しないという報告があるので注意。

次に SGローターの役割についてであるが(上の写真)120度ごとに
チョボが出ており ここが青矢印のピックアップコイルの鼻先をかすめるごとに
信号がCDIのAユニットに送られ 点火するというものだ。
ピックアップコイルはKAではイッコでH2等では3つある。 ポイントのある車種には 
この辺に120度ごとにポイントが付いている。
ピックアップコイルは SGローターのチョボとの隙間を0.4〜0.6ミリとされており
ピックアップのコネクター間の抵抗が300〜400Ωであれば正常だ…な〜んて
書いてあるが上手く走っている場合はこの辺はあまり触らない方が賢明である。

このところ カーボンブラシのトラブルをよく耳にするので 実際に使えているブラシを
紹介しておこう。

フジワラ産業 電動工具用カーボンブラシ 商品番号387904 マキタ用CB−124
が比較的使いやすい。
ホームセンターの電動工具売り場で250円ほどで売られている。

長さはカーボンブラシの新品と同様で…

大きさは長辺が倍近く長いので サンダー等で大きさを元のものにそろえて
使用するとよい。
そのものズバリの大きさのものもあると聞いているが もし分かれば
メモしておいて聞かせてほしいものだ。

内部のスプリングとケースは元々使っていたものを流用して 銅線は
うまくハンダする。
ハンダがヘタクソなヒトは うまいヒトにやってもらおう。

工場でハンダされたものでも 時折とれてしまい ツーリング中に
発電不良を来たすことがあるほどなので注意しておく。

タイミングテスターで光を当ててみて ピックアップコイルとSGローターのチョボ
の合わせマークが合っているなら 一応点火時期は合っているとしよう。
(合ったところで火花が飛ぶようにできているので 合っていて当たり前か…)
どうしても 点火時期をきっちり合わせてみたいんだ〜とおっしゃる御仁のために
さらっと書いとくと 写真のようにダイアルゲージで ピストンの上死点出しを行い 
ダイアルゲージでさらに3.45ミリピストンを逆回転させて戻す。 
こうすると上死点前25度のところが出るので そこでピックアップコイルが
合わせマークに来るように位置をずらし ギャップを調節する…らしいが 
元気良く走っていたなら たいがいバッチリあっているので
なるべくはイジらないようにしよう。 
触らぬ神にたたりなしだ。
ちなみに デスビキャップを少し回転させたとしても点火時期は変わらないので
念の為…。
ヨークアッセンを裏側から見た図
テスターの先はフィールドコイルに電気を流すカーボンブラシだ。(テスターで導通を
見ているようにみえるが意味無し。)フィールドコイルで磁場を作り このヨークアッセン
の裏側にあるアマチュアコイルで交流発電しているのだ。
交流電気の山のピークが なるべく なだらかになるように120度ずつずれて
(位相がずれて)発電されている。 これが三相交流発電である。
ここで作られた交流の電気はレクチファイヤー(整流器)へ行き マイナス電位の
部分はカットされて(すなわち直流化されて)レギュレターへいくのである。
(因みにWシリーズは直流発電機である。 ゆえにレクチが無い。その代わりブラシが
飛び易いのだ〜)
ヨークアッセンのアマチュアの断線等のチェックは ジェネレーターから出てきた三本の
リード線(KAは三本とも黄色、Sシリーズは桃黄白)をテスターで見て
すべての間に導通があるかみる。 あればOK。 加えてそのリード線とヨークアッセン
のボディの間に導通が無いか見る。
あればそのアマチュアコイルが断線したりリークしたしているので アマチュア巻き直し
か交換を考える。
次はレクチファイヤーを点検する。
KAでは サイドカバーの裏の写真の矢印部分にある。
電装パーツを外したり点検したりする時はバッテリーを外した状態で行っている。
うちではKAもH2もW1もMFバッテリーのYTX7LBSを入れて走っている。
特に破裂したりすること無く使用できている。 KHシリーズでもこのバッテリーで
大丈夫らしい。 MFにすると専用のチャージャーを用意しなければならないが
チャージャーもオートストップ機構がついていたりしてかえって都合が良い。
何よりも メッキ部分に硫酸パンチを食らうことがなくなったので最高だ。
元の液式バッテリーよりも一回り小さくなるので ゴム板でスペーサーを作ってケース
に収めている。
H2では 初めは「レギュレーターに整流作用があるのでレクチはついておりません」と
SMに書いてあったが 少し後のモデルになると付いていたりする。
やっぱりあった方がええかな〜なんて感じでメーカーも後づけしたのだろう。
レクチを外すと こんなゴムのダンパーが付いているのが見えるが これが実は
大切なパーツで 純正のレクチのボディーをフレームにアースするのを防いでいる。
ボディーにはプラス電流が流れているので 直接フレームに触れるとヒューズが
飛ぶのである。
くれぐれも捨てたり無くしたりしないように。
カスタムなどで レクチの位置を変えるときは絶縁に気をつけよう。
ストックのレクチファイヤーは えてしてホコリまるけで きたならし〜くなっている。
なんか見た目にもすぐ壊れそうな構造をしているので キレイにするのも躊躇して
しまうのだ。 レクチは ジェネレーターで作られてきた電気のマイナス部分すなわち
逆電流になっているところをカットすることにより交流を直流電流にするのである。
よってある一方方向にのみ電気が流れ 逆には流れないような働きをしているので
ある。
点検方法は まずテスターのマイナス端子を黒の接点につけて、プラスを黄、空、赤に
順につなぐ。 導通があれば 今度はプラスマイナス逆につないで導通が無いのを
みる。 次にテスターのマイナスを黄色につけて 空、赤とつなぎ 導通があれば
今度はプラスマイナス逆につないで導通が無ければOKである。
両方向に向けて導通があればショートしていることになり 導通が無くなっていれば
断線や内部不良になっている。(分かり難ければSM参照)
黄色線は三本有るが三本とも同じモノなので これらとヨークアッセンから来たどれと
を繋いでも構わない。
しかし導通チェックは三本とも別々で行う事。

ここでCM…

ストックのレクチファイヤーは実際にオッシロスコープで見ると整流効果がイマイチで、
ともすれば殆ど交流のままレギュレターへ流れ込んでいることもあるらしい。
KAのレギュレーターは電磁石の機械式スイッチで過剰発電を制御しているので 整流
されていない電流が流れ込むと機械式のスイッチ部分が過剰な仕事をすることになり
故障が多くなると思われる。

なんと!最近ではKA(H1B)やSシリーズ(KH)用のレクチを作っているところもあり
今時のカッチリした、機能も良好なものが安くて簡単に手に入るらしいので
それに交換するのも手であろう。
さあ まいどあり〜!!

次はレギュレーターの点検を紹介しておく。
レギュレーターは KAではオイルタンクの裏側、バッテリーケースの奥にあるので
日頃目に付きにくい。
レギュレターを外す時は オイルタンクを針金で釣っておいて作業すると楽だ。
SやKHではシート下に見えるので作業は楽であろう。
先に書いたように KAでは機械接点式レギュレーターが用いられているが H2や
Sシリーズでは制御整流素子式(すなわち半導体式)なので(SM曰く)半永久的に
故障しないらしい。
しかし過充電になった時はレギュレーターの故障の可能性が高く 点検する必要が
あるだろう(SM参照)。

KAの場合 茶色と黒の端子間の抵抗が53〜55Ωであれば正常であり 5000回転で
端子電圧が14〜15ボルトあれば接点調整も良好ということらしい。
それ以上それ以下であれば交換とあるが そろそろ入手困難になってきたよなあ。
レクチ同様、今時のパーツで無接点式のレギュレーターを開発して欲しいところだ。

このテの古い単車は 簡単なテスターがあればある程度チェックできるので簡素で
よろしいな〜。

CB750やGT750と同様 H1シリーズはジェネレーターの磁界を作るために
電磁石を用いている。 H2やSシリーズでは永久磁石で磁界を作っている。
永久磁石式では 磁石そのものの磁界の強さを調整することができないので
アマチュアで発生した電圧を直接レギュレーターで制御しているが この電磁石式では
フィールド電流をレギュレターで制御し アマチュアの発生電圧を調整している。
このフィールドローターに電気を流すための接点の円盤(スリップリング)がローターに
固定されている。
ここにヨークアッセンの上にあったカーボンブラシが接し通電するのである。
ローターを交換する時は ロータープーラーを用いて外すことになる。
写真はハンドメイドのロータープーラーであるが 汎用性のロータープーラーでも
外れるらしい。 フィールドローターの故障は 発電不良の原因でも多い方であるので
ロングツーリング時には必ず替えを持って走っている人もいる。
ということはこんなロータープーラーも持って走っているということか…。
ロータープーラーを慎重にねじ込んでいくと フィールドローターはポロッと外れる。
必ず外れるが 無理に叩いたりギコギコ捻ったりねじったりしてもダメである。
焦りは禁物である。
逆に外れにくくなるのを防ぐために クランクシャフト側にうす〜くグリースを塗ってから
装着する。
ローターのスリップリング間にプローブを当ててフィールドコイルの抵抗を測定し
3.5〜5.5Ωあれば正常。
抵抗が低ければフィールドコイルの内部短略が、通電が無ければ断線が考えられる
ので 交換しなければならない。
フィールドコイルのアマチュア断線は スカート部のカシメを工作所で外してもらって
次に電気屋で巻き直してもらって 今度はまた工作所でカシメ止めしてもらわなければ
ならないのでかなり修理は難しい。
予備を多数抱えていくしかなさそうである。
フィールドコイルの点検は ヨークアッセンが付いていたままでも カーボンブラシだけを
外して その窓からでもできる。
ローターのトラブルは コイルの断線が多いが 走行中にディスチャージランプが
ぼんやり灯ったりするときは 写真のスリップリング(赤矢印)と
ボディ(緑矢印)の間の樹脂固定が剥がれて ガタついているときがあり
注意を要する。
ツーリング先では ゼリー状瞬間接着剤で固定するとなんとか家までは
帰ることができるらしい…。

しかし 上のがたつきが出ると コイルからでたコードとスリップリングの
接点(ハンダしてある)の周辺の内部断線が出やすいので
矢印周辺のダメージがあれば コイル側を少し切開してコードに余裕を持たせて
ハンダしなおさなければならない。

コイルの内部断線よりも 矢印周辺の金属疲労で通電しなくなることが多いらしい。
いずれも 修理は困難であるので 予備を持つしかないのかな と 残念に思う。

ツーリング中のフィールドコイル断線の図
KAやH1Bはバッテリー点火なので 充電しなくなったら10キロも走らないうちに
エンジンが止まり始める。 ウインカーを点けたり トンネルでヘッドライトを灯したら
イキナリエンジンが止まるので本当に恐ろしい。
真っ昼間ならディスチャージランプが灯っていても気が付かないことがあり、そんな
可能性も常に頭に入れて走らなければならない。
写真で見えるように H1Bは フィールドコイル21007-016が KA1と
ちょっと違う(中心部分がへっこんでいる)ので 
これまたストックしとかなアカンやろうなあ(共通部品やったらよかったのに…)。
フィールドコイルの修理をしてくれる工場求む!
今回紹介した点検は 殆どすべてヨークアッセンを外す必要が無いので むやみに
外さないで点検して欲しい。 …というのは真ん中のボルトを外すと 次に締め付ける
時は特殊工具で回り止めして締め付けるか インパクトツールで締めるかしなければ
ならないからだ。 とりあえずはフロントスプロケに何か噛まして締めといて
バイク屋に乗っていって改めてエアツールで締めてもらうと良い。
またSGローターがきっちり嵌まっていないのにキックすると ローターのチョボが
ピックアップコイルやカーボンブラシのケースに干渉し壊してしまうことがあるので
プラハンマーで軽く叩き込んでからボルト止めをしたら良いだろう。
後もう1つ大切な事に ピックアップコイルは樹脂製であるが もしも緩めた時は
慎重にゆる〜く締付けて行って欲しい。 
でないといとも簡単にパキッと割れてしまうのだ〜。

これらの事を点検してもチャージランプが消えないときは ギボシ不良や
リード線の内部断裂や端子の金属疲労等が考えられるので おちついて
通電をチェックすると 必ずや解決策が見つかるだろう。

GOOD LUCK !




電装編その3 マテリアル編
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