マッハIIIピンポイント整備入門

電装編その5

KAデスビローターとシャフトの考察

KAのデスビローターとシャフト 前期と後期 そして代替部品の互換性 また 何故に不調の組み合せが出るのか 部品を組み合わせて再考してみることにする。
(小さな写真では見難いので いつもの記事より写真は大きめにしております。ダウンロードに時間がかかりますけどご了承下さい。)



まず おさらいも兼ねて デスビシャフトとローターの純正品を見てみることにする。
一番右が初期のデスビローターであり 通称「赤ベーク」と呼ばれるもの。比較的よく出まわっているので 入手しやすいかもしれない。
このローターも実は改良版であり この前の型は 黒くてローターシャフトにネジ止めするようになっている。 ネジを脱着するのが技術的に難しいので廃止されて 硬くタイトに押しこむことで固定する考え方になっている。
真ん中と左は後期のデスビローターで エンジン番号8800番からシャフトごと対策部品に変更されている。
通称「青竹色」と「黒」は部品番号が同じなので 色違いだけで全く同じモノだった。

裏を返してみると デスビシャフトが嵌まる穴の形状の違いがよく分かる。 シャフトの切り欠き部分が嵌まるところが緑矢印のようにローターの端子長軸に対し水平と直行方向にあるのが分かる。
これにより「前期シャフトが付いている車輛の 前期ローターを外して 代りに後期ローターを取り付けると デスビの端子タイミングが90度ズレる」という現象が起こる。
このことを軸にして長々と説明することにする。

後期デスビの特徴は 前期の「ネジ止め式固定」と「押しこみ式固定」に対して「サークリップでカチッと固定」に変わっていることで 赤矢印の部分にシャフト側のサークリップが嵌まる溝がある。

次にデスビシャフトを観察する。
左二本は前期型デスビシャフトで 右は後期型デスビシャフトである。
大事なのは 立ててみると デスビギアーを固定するねじ山先端までの高さが二種類とも同じであることだ。

ねじやまの下に見える穴にはピンが入り デスビギアーの位置決めをするようになっている。

写真は前期シャフトと後期シャフトのギアーピン位置に対するデスビ端子の位置関係を見ている。
写真では分かりやすい用に 同じ日産のデスビローターを嵌めている。
シャフトの違いで 端子はギアーピン位置に対して90度ずれるのが分かる。
写真は 前期型デスビシャフトに前期ローターを嵌めてみたところである。
デスビローターの穴は シャフトに対してタイト目に開けられているので嵌めこむのに 結構力がいる。
当時のマニュアルなどを見ると デスビローターをプラスチックハンマーで叩いて入れる ようなことが書いてあるが 実際にシャフトが車体に付いていると 手のひらで押しこんでもキッチリ入りきらないかもしれない。 しかしハンマーで叩くとローターに亀裂が入って走行中に割れてしまったりするトラブルに陥る可能性があるし ハンマーで衝撃を与えるとデスビシャフトのベアリングを傷める可能性もあるのでプラスチックハンマーはダメだと思う。
実際には手のひらに体重を載せて慎重に叩いて押しこむのがいいかもしれない。
写真のように ローターはキリ欠きのツラの奥部分までキッチリ嵌まるようになっている。
結構硬いので 押しこみきれていないならば デスビローターがデスビキャップに干渉する可能性もあるので要注意である。
前期型シャフトはローターを入れてしまうと こんどは外すのに往生する。
シャフトが車体についていても ローターをつまんで引っ張るだけでは抜けないかもしれない。
シャフト単体では 最後まで押しこんだ場合はドライバーでこじらなければ抜くことはできないぐらいだ。
実際に車体についている時は デスビシャフトに薄くグリースを塗ってから嵌めこんだ方が良いと思われる。
後期型のシャフトは さらに改良されてサークリップでローターを固定するようにできている。
写真のデスビシャフトはサークリップが入っていないが 矢印の溝にサークリップが嵌まるようになっていて そのクリップがローター側の溝にカチッと嵌まるようになっている。
以前デスビシャフトを交換した記事を書いているが 恥ずかしながら後期シャフトに そういった工夫がされているのを知らなかったので クリップを入れずに交換して ローターを普通に取りつけて走っていた。
それでもデスビキャップのセンターのカーボンブラシで押さえられているので 走行中にトラブルになることはなかった。
余談になるが あのカーボンブラシはパーツ番号がついていて 別パーツで購入することができた。
しかし センターのブラシが磨耗して使えなくなる前にキャップ全体が劣化して 隣のコードにリークしたりすることが多いので 実際にはあのカーボンブラシを交換してまで使うことにはならなかっただろう。
あのブラシを交換したというはなしを聞いたことがない…。

デスビシャフトを奥まで入れると カチッとサークリップが嵌まって固定される。 
そして裏から見るとツライチになっていてウットリ♪

ねじ止めにすると ねじを止めることができない→押しこみ式にするとタイトすぎて抜けない(押しこみきれない)ということから 過剰な処置?でローターを固定するように設計されている。
外す時もカチッと抜けるようになっている。

前項で紹介した日産のデスビローター…。
これをみつける苦労はここでは割愛する。
メーカーも同じ三菱製で 規格的にはよく似たものなのだろう。

このローターは640円だかで 今でも日産自動車に注文すると入手できるが ネットオークションで「KA用純正」と騙って6400円!で販売している輩もいたようである。
「ヒトのふんどしでスモウをとる…」というやつだろうが 安く仕入れて高く販売するというのが商売人の基本姿勢なのだろう。
そんな低次元な連中でも知ってることを 実際にマッハ乗ってて知らなかった というのは 騙されて買ってしまったヤツも 勉強不足と反省すべし。

肝要は「騙すな 騙されるな」 である。

さてこの日産ローターの互換性であるが 寸法上 またギアーピンの位置に対しても 後期ローターの代替として使用できると紹介した。
色々と混乱して理解されている様子なので 写真で検証してみる。
まず 後期シャフトに後期ローターを差し込んでみる。
ギアーピン位置とローターの端子に注目。

続いて同じ角度で撮った写真であるが シャフトに日産ローターを差し込んでみるが ギアーピン位置に対して同じ位置に電極端子が来ているのが分かると思う。
このことから「後期のシャフト後期のローターで走っていた車両ならば純正のローターを外して日産ローターを嵌めれば走ることができる」ということである。
実際そのようにして使用しているが 特にトラブルはない。
ヨタインプレであるが 日産のローターの方がスパークかすがつきにくい印象であるが 根拠はみあたらない…。

赤矢印のように サークリップ溝は意味がなくなるので カワサキが一生懸命30年前に対策した機構はなくなってしまうが シャフトに対して比較的タイトに嵌まるので 使用上は問題ないと考えている。

次は シャフトにローターを嵌めた時の寸法上の問題を検証する。
右から 前期のシャフトに前期のローターをつけたもの 前期のシャフトに日産のローターをつけたもの そして一番左が後期のシャフトに後期のローターをつけたものである。
台に立ててみるとほぼ同じ高さになるのが分かる。
写真は割愛するが 前期後期のデスビシャフトに 日産のローターをつけて並べても同じ高さになる。
シャフトの長さが同じなので当たり前といえば当たり前であるが 一応書いておく。
ここで大事なのは「前期と前期」「後期と後期」で組むと同じ高さになっていると言うことである。
デスビキャップが前期も後期も同じ(インシュレーターのところに紙ガスケットが一枚入るようになるけれども)なので その位置関係は変わらないように設計してある。


ここまでで前期のシャフトには前期で組む。 後期のシャフトには後期ローターで組むということが分かるだろう。
現実には色々な車輛があるといいことが トラブルシューティングして行くと分かることかもしれない・・・

問題となるのは 前期後期のシャフトとローターを混ぜて使うことであろう。
現実には 前期シャフトが入っている車輛にローターが欠損していて 手に入ったのは後期のローターだった というパターンである。
このパターンは なにかしら電気的トラブルが多くてスッキリしないことが多い。
写真は前期のデスビシャフトに後期のローターをつけてみたものを 前期同士で組んだものと並べてみたところである。
前期シャフトを後期ローターに奥まで押しこんだが前期前期の組み合わせに比べて高くなっているのが分かる。
実際には1.5ミリぐらいの長さ違いになる。
デスビギアーの位置はカバーに対して固定なので エンジンに取り付けた状態ではデスビローター端子が外側(エンジン右側)にとび出てくることになる。
これによって デスビキャップが閉まらなくなったり 接点距離が変わってきたりするのかもしれない。
後期ローターに初期シャフトを差し込むと矢印の部分に隙間があくので この分長さが変わってくるのだろう。
前期シャフトに日産のローターを差し込んで前期同士組んだものと比較すると高さは変わらないことが分かる。
だから長さ関係においては 前期ローターの代りに日産のローターを使用しても問題なさそうだ。
(実際にそうしてみたヒトがいたら連絡下さい。)
当たり前の写真であるが 前期シャフトに後期ローターをさしたものよりも 日産ローターをさしたもののほうが 長さ関係はマシと言えるだろう。
最後に 実際に前期シャフトがついている車輛に各ローターをつけた場合 調整位置関係がどう変わるのかをみて締めくくることにする。
前期シャフトに前期ローターと日産ローターを嵌めて観察すると ギアーピン穴に対して端子が90度ずれている。
これを基本にして各ローターを嵌めてみる。
デスビギアーにマークして 現在 上死点に合わせてあり前期シャフトに前期ローターが付いている状態で 合いマークが垂直上方で合っているとする。
そのギアーの位置関係でローターを交換する。
まずは青竹色後期ローターを嵌めると 上死点に合っているギアーの位置で端子(合いマーク)が90度反時計回転にズレたことがわかる。
だから 前期デスビシャフト前期デスビローターで走れていた車両から 前期デスビローターを外して後期のローターに取り替えても「端子の位置が90度ズレますよ」という意味の写真である。
バカバカしいが折角なので黒い後期ローターを嵌めてみたが 青竹色と同じく反時計回転方向に90度端子位置(合いマーク)がずれる。
さらにそのギアー位置で日産のデスビローターを嵌めてみるが 後期ローターと同じギアー位置なので 同じように90度反時計回転方向にずれる。
嵌め込むキリ欠きは 180度捻った場合 かなり無理しないと入らないので ナンボなんでもそんなヘッポコはないと思われる。

全ての話しをまとめると…
1前期シャフトには前期ローター 後期には後期で組むべき。
2逆に前期と後期を混ぜて使うと長さの問題が出るので止めるべきである。
3日産のローターは 前期後期どっちのシャフトにも使用可能と思われる。
4ただし前期のシャフト前期のローターで走れていた車両を デスビロータータイミングを合わせなおさないで 前期シャフトに日産ローターを取り付けても火花はちゃんと飛ばない。
5後期シャフトに対しては 日産ローターと置き換えることでデスビタイミングを合わせなおす必要はない。
…ということになる。

前期デスビシャフトに日産ローターをつける場合は 写真のように 一度右カバーを外して上死点に対して合いマークを合わせる必要がある。


平成17年3月15日 記


余談の余談であるが 
「後期デスビシャフトに前期デスビローターは使用可能か?」
と訊かれるかもしれないので 写真を挙げて終了。




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