CB90復旧日記・その1
プロローグ

 

 

プロローグ

 

6年以上もスーパーカブC65を下っ駄ーとして愛用?してきたが 都合でアルバイト先が遠くなってしまった。 大阪の最も危険でゴチャゴチャした キナ臭い辺りを非力なC65で走るのも逆に恐ろしくなった。 エンジン積換え後 絶好調のC65には悪い気がしたが、もう少しキビキビとしたフットワークのニューゲッターが欲しくなった。(そろそろカブも飽きてきたしね。)

 
ニューゲッターの候補としてはカワサキのKM90,AR80,ホンダのMB(MT)−7,CB(SL)90,ヤマハRD90あたりかとイメージした。 ThaiカワサキのKH125やKE100も考えたが 125に乗るんなら200や250にのるわい!と思うのでおのずから70や90を選んでしまう。
改めて痛感したのは、新車の理想的原2はほぼ壊滅であることだ。 100以下で2ケツ可能の新車はスクーター系とカブ系とあとはベンリー90ぐらいしかないのだ。もしもCRM80やKSR80が2ケツ可能であれば速攻でとびついていただろう。 しかし2ストローク車のメーカー自主規制で これらも消えゆく運命にあり 欲しい人は今のうちに買っておくべきかもしれない。
少々脇道に逸れたが そんなわけでニューゲッターの品定めをすることにした。 ところが探している時は見つからないものである。 不景気なご時世なので 少しでも知り合いのお店が潤うように“店もん”で行くことにした。 大人の原2野郎はこんなところにも気を遣いたい。 よけいに損させているかもしれないが、モノが回転するのは良いことなのだ!

 

平成11年3月24日

 

何軒かの馴染みの単車屋に 良好な原2は無いかと電話しておいて数週間が経ったが今一つ コレは!というものは出てこない。 そんなとき “CB90の小ギレイなのあるけど 見る?”と連絡が入った。 すかさず近日中に見に行くと返事をする。 期待半分であったが 実は様々の思惑があり あまり乗り気でもない。

 

3月26日

 

仕事の帰りにCB90を見に行った。 モトハウス ライドオンの大将は いつのまにか10年以上の付き合いになる。 店の立ち上げを手伝ったこともあった。 中古バイク屋特有の一見さんの入りにくい雰囲気が漂う。 ちなみに 居酒屋の美味い店も入りにくい。 入ってしまうと居心地がいいのも同じである。さて CB90はメカニカルディスク搭載のJXというモデルであった。  

本には1974年から発売とある。メカニカルディスクとは ワイヤー駆動のフロントディスクブレーキであり 今ではアホくさメカであるが当時は野心作と言われたものだった。タンクは白地にグルグル目玉ラインが入ったもので なるほどきれいであった。
大将曰く、エンジン絶好調で100キロぐらい出るんじゃあないかと。 ふんふん、まあ85キロくらいは出るんかと値踏みする。 このへんまでは 楽勝で買え買えパンチをかわしていたが シート裏から発掘されてきたというユーザーマニュアルを見て しっかりとしたボディーブローをもらった気がした。 さらに マニュアルによると メインスイッチオフ時にホーンボタンを押すと 4つの方向指示器が点灯するとある!なぜか!?暗闇でハンドルキー、エンジンキーの穴を見つけやすくするためのバカメカニズムである! ああ〜っっ! ボディーブローでくの字になったところをショートフックの連打を浴びたようなものである。 これは買いか…とダウン寸前で 段平の声がした。

 
あの迷作CB50のエンジンだぞ〜!

 
この一言で目が醒める。 そうだ! CB50系のボアアップ版だ! (賢明な読者には誤解であることは明らかであるがこの段階では こう思っていたのである。)10代の頃はゴリラの改造改悪に努めるありがちな少年であったが CB50系のエンジンは全く良い思い出がない。 同級生のR&Pの調子を見てやったことがあった。 ホンダR&Pはキャッチコピーを“自由バイク”と言った。 なぜに自由かと言うと メーカー指定の2種類ぐらいのハンドルバーを勝手に?変更できるというヘンな自由であった。 そんな“自由”をお上が許すわけもなく、一年も経たないうちにハンドル交換はできなくなった(とおもう)。 そんな当時から R&Pのエンジンのイメージが悪すぎる。 

 
まず当時の技術力ではアイドリングがどうしても安定せず、出足加速中に息をつく癖があった。 夏は熱だれしストールしやすく パワーを出しにくかった。 カブエンジン系の方がパーツも多く パワーも出しやすかった。 とにかく アイドリングがばらつき パワーが出にくく 低回転トルクはスカスカのイメージを払拭できないのである。 ガソリンタンクの内側が思いのほか錆ていることもあって 今日は一旦考え直すことにする。大将は錆は何とか掃除しておくから、儲け度外視で8万円ぐらいでどうかという。
かなり魅力的な話である。 グラグラ揺れながら店を出る。

 

3月29日

 
今日も仕事で 今里筋をカブで走る。 やはり左は路駐で右は暴力的なクルマがかすめとんでゆく。 急に路駐のドアが開く。 咄嗟に右に回避すると今度はクルマと接触しそうになる。 このままでは危険である。 そのうちにとり返しのつかないことになりそうだ。

 

3月30日

 
今日はカミさんの機嫌がなんとなくよい。 夏の旅行の話のついでにきりだしてみる。 桃谷までカブで走るのはたいがい危険なので、カブを手放した上で別のもう少しよく走る単車を買おうと思う。と話したが アッサリ了解が出た。 やはり安全に走るのが一番なのだ。

 

4月2日(前編)

 

今日は朝から天気が悪い。 雨は降らないが曇り空が重々しくのしかかる。 仕事のノリも今1つだし、このところ景気のいいスカッとする話しもないし…。 色々と引っかかることもあるが思いきってCB90JXをニューゲッターにすることに決める。 

上新庄の職場にカブを置いて、とりあえずは スシ スキヤキ テン××ナンバーで乗って帰ろうと思いついた。とたんに湿気ッた気分は吹っ飛んでしまい、定時で現場を飛び出した。ヘルメットを片手にタクシーをつかまえる。 色々なトラブルは出てくるだろうが まあ 例によって例の如く乗り切れるだろう。タクシーはバイク屋へ向かう。気分はハイになる一方、黒い雲はますます厚くなるばかりだ・・・。