連続大河「私」小説・HXと私 

 

by 杉作


 

原2マニアの定番・HX90

HX90は、AT90に始まるヤマハの90cc2サイクルツインエンジン(ジェットツイン)シリーズの最終版で、1971年から73年にRD90にバトンタッチするまでに製造されたバイクです。最大馬力は10.5psでカタログ最高速は110km/hと(当時としては)高性能で、スタイルはRX350シリーズ共通のスリムでモダンなスタイルになっています。
 
当時のヤマハ2サイクルロードモデルはRX350、DX250、AX125、HX90、FX50とシリーズ化され、RXからHXまではほぼ同じスタイルでまとめられていました。

 


 
出会いそして別れ


私とHXの出会いは高校生の頃の暑い夏でした。夏休みにペンキ屋のアルバイトをしていた私は、郵便局の独身寮の塗り替えをしていたのでした(合法的シンナー遊び?)。
そこの自転車置き場の一角はバイクの墓場と化しており、カブ、CL250、RM250などの中にHX90もたたずんでおりました。当時古いバイクに興味のなかった私は、HXを見て「小さいのに2気筒だ!」「ちっこいシリンダーに小さいキャブが2つ付いてる!」と驚き、スタイルと青/白のタンクがやけに気に入ってしまいました。ペンキ屋の頭領が管理人さんと交渉してくれて、「ナンバーが付いてないのは持って行ってもいいよ」ということになりましたが、HXにはナンバーが付いており、もらうことは出来ませんでした。(今考えると、書なし車をもらってもどうしようもなかったなと思いますがねー)どうしてヤマハはHXから面白味のない単気筒のRDに変えたんだろうと当時は思いましたが、コスト削減だったんでしょうかね?

 

 

再会そしてすれ違い


社会人になり、ガレージセールなどでHXを探しましたが見つからず、「HS1なら探している人もいるけどHXを探している人は珍しいね」などと言われたりしました。
6年前、雑誌(Mr.Bike BG)の広告の片隅に「HX90レストア用8万」と書いてあるのを見つけ、即電話して見に行きました。他のバイクに挟まれていたので良く見れなかったのですが、ほこりまみれでしたが程度は悪くなさそうで、青/白のタンクも凹んだりはしていません。でもこれで8万は高いなと言う感じでした。ちょうど転勤になるところだったので置き場所がなく、2ヶ月間店に置いておいてくれるなら買うと言ったのですが、店の人は「すぐ処分したいんだよね〜」とつれない返事。ということでHXはまたしても私の元には来ないのでした。

 

そしてついに!


がっかりして転勤した2ヶ月後、出社途中にBG買って会社で見ていたら(おいおい!)、なんと同じ店の広告に「HX90 3万」と出ているではありませんか!仕事中に即電話したのは言うまでもありません(仕事しろ!)。速攻でトラックを借りて取りに行くと、やはり前と同じHXでした!2ヶ月間預かってくれて、5万円値引きしてくれたようなものです!ラッキーでした。キックは降りましたが、トラックに積んでみると結構さびていて「直せるかな?」と心配になりました。帰りのサービスエリアで試しにメッキ部分をこすってみると結構すぐにさびは取れてきれいになりそうです。嬉しくなってそのままサービスエリアでレストア開始になるところでした(はっと我に返ってやめましたが)。普段AT車に乗っているので、高速の料金所でエンストかましたりしながら家に帰りました。(この時にレストア前の写真を撮っておけば良かったなと今でも後悔しています。) 


 

HXレストア大作戦(エンジン編)

 
さあレストア(と言うよりも修理)開始です。メインキーの制作をバイク屋に頼み、動かないスロットルに取り掛かりました。キャブのスライドバルブが固着しているようで外れません。キャップを無理矢理ねじってCRCをぶち込み、何とかスライドバルブをはずすと、なんと前後がさかさまに入っていました!前のオーナーは多分このせいでエンジンが不調になり乗らなくなったのではないでしょうか?私にとってはありがたいことです。キャブは内部がメタメタ状態でしたが、灯油で洗って何とかなりました。しかし、一方のキャブの取り付け部のゴムリングがボロボロに切れていて、YSPつくばで部品を注文しようとしましたが、この部品はキャブの本体の一部として売られていて単体では売ってもらえないことがわかりました!( YSPつくばでは、細かいパーツをしょっちゅう注文するので「HX90担当」の人まで出来てしまってました。その節は大変お世話になり、ありがとうございました。)

 

 


このまま取り付けたのでは空気を吸って焼き付くのは必至です。そこでホームセンターに行ってみると、水道のパッキンに使えそうなものがあるじゃないですか!早速買って帰り、カッターで削って瞬間接着剤でくっつけて何とか形になりました。
マフラーははずしてエキパイ部を掃除。バッフルは取れそうにないのでそのまま放置(!)。オイルポンプはキックするとピコピコ動くのでOKと判断しました。
出来上がったメインキー、新しいプラグと無理矢理充電した古いバッテリーを付け、ポイントを磨き、点火タイミングを調整し、混合ガソリンをタンク(内部全く錆なし!)に入れてキックしてみると…「ポロロン、ポロロン」とエンジンはあっけなく始動しました。ゴロゴロ音もしないので、クランクも大丈夫そうです。私は「動いているもの(個所)は修理しない」を鉄則にしているので、ヘッドを開けたりはしていません。私の少ない経験では、この鉄則は守った方がよさそうです(何度か痛い目に会いました)。


しかしエンジンがかかって喜んだのもつかの間、あらぬ所から煙が・・・・

 


 

 

おまけ・HX写真集