CB90復旧日記・その5
ひたすら苦闘編

 

 

4月22日



このところガレージ仕事が多いので 日曜日とはいえガレージに降りるのは気がひける。 気がひけるがそろそろタンクライナーが乾燥しているので タンクを装着して走ってみたくてウズウズする。

何かきっかけがないかと思っていると 昼過ぎにはらださんがあそびに来た。 彼女が遊んでくれないので ふらっとやってきたらしい。
これ幸いとCBのタンクをつけ始める。 大のおとなが休みの日に差し向かいで原付をいじっているのもいいものである。 コックをつけてガソリンを入れたが アッサリ取り付け部からジャジャ漏れなので慌ててガソリンを抜きにかかる。

コックの取り付け部が剥げて錆びているのでコーテイング液を指で塗りつけたのが間違いであったらしい。
加えてコックとタンクの底を圧着させる部分のゴムパッキンがコチコチに硬化して役に立っていないみたいに見える。 パッキンは幅3ミリほどで 運動場のトラックのような形をしている。 これを耐油ゴム板から切り出すのは至難の業のようである。 厚み2ミリほどのコルクマットがあったので これをハサミで切って硬化したゴムパッキンの下に下駄として入れてやることにする。 指で塗ってゴツゴツになっているコーティング膜はやむなくカッターで削ぎ落とす。

再びガソリンを入れるのは緊張の一瞬であったが漏れは止っているようである。
これに気をよくしてタンクキャップのパッキンもこれで作って元々ついていたものと重ねて使うことにする。 これまたバッチリっぽいので ついでにカブのキャップのパッキンも作る。 カブは ガソリンを満タンに入れると漏れがひどく スタンドで満タンですかと聞かれると ちょっと手前で、と答えてきた。 5年以上も乗っているのに もっと早くやれよなあと我ながら情けない。

ぞうり履きなのではらださんに試乗してもらう。
ノーマルマフラーなのに意外と大きな音を立てて住宅街の角を曲がっていく。 見えなくなっても遠くで音が聞こえており 再び徐々に大きくなると角の陰から姿を現わした。 トルクもあって調子よしとのコメントである。 反応は上々だ。 未だ実験機であるが早速実戦配備してみよう。 R&Pのエンジンと違うし 少しずつセッティング出しすればいいやと楽天的に考えることにする。


補足 by H

R&PとかノーティダックスのCB50系直立エンジンにむかし乗った経験ではトルク感に乏しくよく回ることは回るがパンチの無い印象しか残っていないです。特にTL50にいたってはトライアル車のくせにアクセル操作で前輪を上げることが出来なくてオフでは致命的だった覚えがあります。
このCB90JXははじめて乗ったけどちゃんとトルク感ありました。この時代の単車らしく排気もよ〜抜けて気持ちいいです。
でも自慢のメカニカルディスク全然効かへ〜ん!(JXってのはディスクブレーキ仕様のこと)

 

 

4月27日

 
調子見がてらバイトに行くのに乗って行ってみる。

アクセルワイヤーやクラッチワイヤーのオイル通しとあそびの調整をしたことでかなりタッチが良くなっている。
フロントのメカニカルブレーキもかなり利くようになっている(気がする)。 ところがエンジンはというと 全体にトルク感がうすく メリハリよく走ろうとすると7千回転周辺で引っ張らなければならない。 淀川を渡る橋の上で引っ張ってみたが やっと80キロほど出るかという程度である。 とにかくぶん回してやらないと前に進まないが 回転も無理矢理に上げている感じがする。
さらには10キロぐらい走ったところでアイドリングが安定しなくなってきた。 2千回転付近にあるアイドリングが突如としてストールするのである。 アイドリングが不安定であるばかりでなく アクセルを急に開けると確実にストールする。 ガソリンラインは熱だれのためか空になっていて フィルターの部分でガソリンが壁を伝って落ちるのが見える。 フィルターはそこで表面積が広くなって 気化するきっかけになる。 熱だれの原因になるので止めた方がいいか。
信号では煽っていないと止ってしまう。 横に並んだ400が 何を勘違いしたのか 青になったとたん金切り声を上げてすっとんでいく。 カブよりはよく走るかもしれないが まだまだ調子が出ていない気がする。 ガソリンが全体に濃いので吹けあがりが重いのか 薄すぎるのでトルクが出ていないのか不明のことが多い。 エアークリーナーが目詰まりしてかなり濃くなっているのかもしれない。 タイヤやチェーンの発注と一緒にエレメントも注文してみよう。

 

 

5月9日

 
今後またお世話になるので 重野のオッちゃんのところでチェーンやタイヤの交換をしてもらう。 オッちゃんには申し訳ないが C65は手放して新たにCB90に乗る話をしたが さんざん無理をきいてもらったにもかかわらず 本当はCBぐらいの方がのりやすくていいだろうと笑ってくれる。

エレメントだけでなく タンクやシート、サイドカバーなんかも出るわけがないよなあと思いながら注文する。 あとはロータリーのチェンジペダルも着けたいので適当に見繕って欲しいと話す。 そんなもんはナンボでもあるだろうとのこと。

店を出ようとするとオッちゃんはパンク修理の手を止めて ガソリンが濃い音がしているのでニードルで薄くしたらどうかと言う。 早速ニードルを見ると真ん中から一段濃いところになっている。 標準は真ん中で 一段濃くしてあったんだろうか。 これでアイドリングの件や回転のばらつきも良くなるかもしれない。 Eクリップを真ん中にして アイドリングとエアースクリューを調整する。
エアースクリューは普通一回転半や二回転戻しだろうが どうあわせても三回転ぐらいのところが良いようだ。 標準はナンボ戻しなのだろうか。 オッちゃんは そうそうこれぐらいよ と歯茎のあがった歯をむき出して笑う。 これからもよろしくと手をあげて店を出るが なんとなく吹けあがりも軽く 高回転の繋がりもいい気がするなあと思いながら家へ向かった。

 

 

5月17日

 
重野モータースから部品が揃ったと電話があり 仕事の帰りに寄ることにする。
タンクやシートは出なかったが スプロケやエレメントはホンダから出た。 宗一郎の没後旧車のパーツ事情がテキメンに悪くなったと言われているが カワサキや パーツ事情がカワサキ以下の他2メーカーとは比較にならないぐらい良い。
ちょっとした所も点検しておいて欲しいので預かって作業をしてもらうことにする。 帰りはC101を貸してもらう。 OHVカブは明らかにOHCとフィーリングが違う。 バルブの開閉感が明らかに違うのだ。 55ccなのでC65に比べるとトルクはないが 殊のほか吹け上がりが軽快でよく走る。 単車に乗っていると なんと楽しいのだろう。

 

 

5月18日

 
チェーンの交換とかが終了したと連絡があったので 喜んで取りに行った。 リアースプロケの痛みはひどく チェーンは2コマ分ぐらい延びていたらしい。 忘れずにチェンジペダルもカブ用と替えてもらう。 かかとの部分を少し外に曲げるとバッチリである。 ダサさは否めないがブーツを止めて普通の靴を履いて乗れるので仕事にも使いやすくなる。 スピードメーターの球も切れていたのも替えてもらう。 エレメントを替えて少し乗ってみてくれたらしいがアイドリングやもたつきの症状には気づかなかったらしい。 ひょっとしたらエレメントの交換で良くなったかと期待してしまう。
 
乗り出してすぐに各部の動きがよく ちょっとしたことに細かく手が入ったなあと感じる。 しかし残念ながら 6キロほど走ったところでアイドリングストップ運動が始まる。 ご丁寧に信号が青になった瞬間にも止る。 その都度路肩に寄ってエッチラとキックすることになる。 プラグは少し焼け気味でもちょうど良いぐらいである。 とかくぶん回さないと走らないのは4ストの90ccなど 所詮この程度なのだろうと思うことにした。 しかし6千回転以上が息つきながら回るのはいただけないよなあ。

 

 

5月21日

 
ある程度良くなったよと ライドオンに寄ってみる。

「しかし店から出て数キロでエンコはひどいぜ」
「ナンボでも軽トラで迎えに行ったのに…」と大将は笑う。
「ニッチもサッチもいかんようになったら頼む」と笑っておく。
環境にやさしいアイドリングストップ仕様だと話すと「環境ねえ…。」と鼻で笑う。

キャブを今一度見直すことにする。 数分も経たないうちにキャブは全バラになる。
今時のバイクではこうはいかないだろう。 アイドリングジェットから少しカスが出ただけで 特には問題なさそうであった。 但しエアースクリューはかなり戻さなければならないみたいだと言う。 これは混合気が濃いことによる症状だろうか? 正式には何回転戻しなのだろうか。
次に ポイントを見ることにする。 点火時期は合っているが ポイントギャップが狭いらしい。 ポイントの調整は 今のところ全く不得手である。 エアースクリューの調整と同じく 今イチ何がベストか分かっていない。 自分でトライ&エラーで習得するしかないだろう。 さっそく 家でイジってみよう。 HX90なんかもポイントギャップが悪いとテキメンにエンストしやすくなるらしい。 さあこれで乗ってみてくれと言う。
確かに 店の中でエンジンを掛けた感じでは 良くなった気がする。 アイドリングから ガツンとアクセルを開けるとやはりストールするが それでもかなりマシなようだ。

喜びいさんで飛び乗って家路を急ぐ。 信号で止ってもアイドリングは安定している。 急激にアクセルを開けないでジワーと開ける分にはストールしないようだ。 かなり良くなっている気がする。 上も幾分かモタつきがマシだ。

真っ赤な三日月を眺めつつ神崎川の堤防を走った。

 

 

5月31日

 
CB90は一応完調に近いかなあと思うと 急に乗らなくなった。 他にも乗って調子を見たい単車は沢山あるのだ。

ずいぶん乗っていない気がしたが 10日ほどしか経っていなかった。 しかし なんと バッテリーが上がっていた。 しかもほぼ完璧な上がりである。 最悪なことにCB90JXは6ボルトバッテリー点火車である。 バッテリーは元々ついていたへぼバッテリーなので 残念ながら寿命が近いのだろう。 6ボルトは バッタ屋で買った バッタチャージャーで充電するしかない。
補液をして 3時間ほどチャージしてエンジンを掛けてみる。 特に問題はなさそうだが 不調の原因がバッテリーである可能性も忘れてはならない。
最終的には6ボルトバッテリー点火が 一番のネックになっていく可能性が高いよなあ。

 

 

6月1日

 
バイトにCBを引っ張り出す。 点火時期の調整後 少し遠い距離を乗るのは始めてであるが すこぶる快調である。 淀川を渡る橋の上では90キロぐらい出る。 しかもギクシャク感は少ない。

これでエンジン関係は完璧だなあと喜んだ…次の瞬間 再びアイドリングストップ運動を始めた。 吹け上がりが緩慢であることは以前と同様であるが 今度は アクセルを戻すとパンパンとアフターファイヤーする。 信号ではアクセルを煽ってやらないとすぐにストールする。
これらの症状は10キロぐらい走ってエンジンが過熱した頃からでる。 しかし今回はあまりに急なので ポイントが急にズレたのではないかと勘ぐってしまう。 バイトには 定時に入らなければならないのでアイドリングスクリューを回してアイドリングを上げた。

なんとかバイトには間に合ったが その原因をグルグル考えてしまう。
帰りは焦りがないので 冷静に対処する。 さきほどアイドリングをかなり上げたにもかかわらず その位置でほぼ良いみたいである。 エンジンが冷えたためか 少しは安定している。 ポイントの問題か 混合気が薄いのか濃いのか または極端な熱だれによる症状なのか バッテリーが弱っていることによるものか 疑問は渦を巻いて頭の中を巡りはじめた。